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  • 07/24/15:00

09.26.23:58

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 31回目

 その日も、僕にとっては変わらぬ夜になるはずだった。ダイアナに至る扉を開け、カウンターに腰掛けながら、グラスとマルボロを片手に綺羅星のようなナンバー達に耳を傾け、ステージが始まれば、体ごとリズムに身を委ねる。僕にとってはありふれた日常のような時が穏やかに流れるはずだった。
 それは僕にとっての最初のステージが終わった後に起こった。
 その日は、平日にしては良く客の入っていた日で、ステージ前の丸テーブル以外はほとんどの座席に大小のグループが笑顔を見せている。大学生のサークルか、新入社員の親睦会(?)のような若い客の姿も見える。
 その所為かは知らないが、いつものどちらかと言えば聴かせる選曲のステージ構成ではなく、週末を思わせるような踊れるナンバーが数多く演奏された。今となってはさすがに曲名までは覚えていないが、最後にエディ・コクランの♪サマータイム・ブルース♪が流れた事だけは鮮明に覚えている。勿論僕はダンスフロアの中央に陣取って踊り、最高の気分でダンスフロアを後にした。

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09.25.22:28

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 30回目

 最後の仲間を失った後も、僕は変わらずダイアナに通い続けた。変わらずと言うよりも、仲間と通っていた頃と比べて、予定を合わせる必要も無かった為か、通う頻度は増えていったと言う方が正しい。多い時は週に2・3回。それまで行く事の無かった平日にまで、顔を出すようになっていた。今にして思えば、その動機の一部には、楽しみを放棄した仲間達に対する、ある種あてつけの様な感情が働いていたのかもしれない。
 お前達がいなくても、俺はこんなに楽しんでいるぞ―と。
 それでも僕は、実際あの日を迎えるまでは、存分にダイアナという世界を楽しんでいた。カウンターから見下ろす新しい眺望を知る事ができたし、何人かの古い常連客との一期一会も新鮮だった。仲間だけで通っていた頃には気付かなかった新たな魅力が、そこかしこに隠れていたのだ。

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09.24.22:44

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 29回目

「僕にもこの店に通う仲間がいたけど、今では一人です。それでも通い続けた。でも、もう僕は踊れなくなってしまった」
 この時すでに、この二人に全てを話す決心をしていた。僕をこの世界に引きずりこんだ先住民である彼らになら、打ち明けても構わないと思ったからだ。話を聞いて貰えば楽になるかもしれないし、なにか良いアドヴァイスをもらえるかもしれない。何の確信は無くとも、この暗闇で、僕が最初に見出した光明である事だけは確かだ。
「どうして踊れなくなったんだ?」
 Richardの言葉をきっかけに、僕はあの日の出来事を、頭の中で整理しながら話し始めた。何しろあの日の事を人に話すのは今日が初めてであり、恐らく今日が最後だろう。彼らに正確に理解してもらう事だけに、僕は心を砕いた。

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09.23.22:22

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 28回目

「昔は三人で踊ってましたよね。それが今では二人ですよね」
 全く答えになっていない僕の言葉に、Richardが眉間にしわを寄せた。何か言いたそうだったが、それより先にMickyが口を開いた。
「そう。もう一人。Jerryって奴がいました」
「そうやってもし自分が最後の一人になったら、それでもこの店に通いますか」
 Mickyは少し考えている様子だったが、Richardの返事はにべも無いものだった。
「そんな事一々考えるかよ。その時が来たらその時考えるさ」
 考え続けていたMickyの答えもRichardに賛同したものだった。
「俺も同じかな。一人でも行きたければ行くだろうし、そうでもなければやめるだろうし。その時にならないとわかりませんよ」
 僕は視線をグラスに落としたあと、彼らに視線をもどすと、頼りない笑顔を作った。

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09.22.22:21

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 27回目

 勢い良くグラスのミネラルを空け、僕は大きな溜息をついた。
 何をやっているのだろう-
 それが今の正直な感想だった。水1杯程度で酔いが簡単にさめるわけでは無い。でも、何だか冷めた気分だ。
「アンタ、さっき昔踊ってた様な事を言ってたけど、今は踊らないのか」
 Richardの言葉にはっとした。勢いとは言え、とんでもない事を口走ったものだ。どうにか誤魔化せないかと思考をめぐらしては見たものの、都合の良い台詞はいつまでたっても浮かんでこない。僕は半ば諦めて、もう一度溜息をついた。

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