07.23.21:48
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10.05.22:01
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 36回目
どんなに楽観的に考えようとしても、喉に刺さった小骨のような不安は、僕の頭から離れようとはしない。表面的には、ダンスを馬鹿にするあの若者グループにその楽しさを見せつけようという気概を持ってはいるのだが、実際には、僕の動きは萎縮する一方だった。常にトキメキを感じていたダンスフロアは、いまや針の筵と化していた。
僕の後ろで笑い声が湧き上がる。丁度、あの若者グループの席辺りだ。振り返る勇気はとても無かったが、脳裏に僕を指差して笑いあう男女の姿が鮮明に映し出された。
とたんに、あのトイレのときと同じように膝までもが、笑い出している。僕のステップはさらにぎこちなさを増した。
誰かのウィスパーボイス―
きっと僕を馬鹿にしているに違いない。
一度転がりだしたら、もう止まらなかった。僕のガラス細工のように繊細な自信は、やがて壊れる時が来る事が決められているシャボン玉のように、跡形も無く消えてしまった。
正直、その後僕がどうやってダイアナを離れたのか分からない。気が付いた時には、駅のホームの端で呆然と立ち尽くしていた。
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僕の後ろで笑い声が湧き上がる。丁度、あの若者グループの席辺りだ。振り返る勇気はとても無かったが、脳裏に僕を指差して笑いあう男女の姿が鮮明に映し出された。
とたんに、あのトイレのときと同じように膝までもが、笑い出している。僕のステップはさらにぎこちなさを増した。
誰かのウィスパーボイス―
きっと僕を馬鹿にしているに違いない。
一度転がりだしたら、もう止まらなかった。僕のガラス細工のように繊細な自信は、やがて壊れる時が来る事が決められているシャボン玉のように、跡形も無く消えてしまった。
正直、その後僕がどうやってダイアナを離れたのか分からない。気が付いた時には、駅のホームの端で呆然と立ち尽くしていた。
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10.01.23:13
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 35回目
席に戻った僕は、次のステージが始まるまでの間、ひたすらボトルの中身を減らし続けていた。まるで燃え尽きそうな心に、必死で油を注いでいるかのように。それだけでは飽き足らず、心の中では常に軽蔑されるような理由が無い事を並び立てている。でもどれだけ理由を重ね着しても、僕の心の強度はそれ以上上がりそうになかった。
随分長い間トイレに篭っていたようで、次のステージまでは残り5分。ステージが始まれば、きっとこんな嫌な気分とはおさらば出来る。僕は頑なにそう信じて、その時を待っていた。
そのステージも、やはり出だしから踊れるミディアムテンポのナンバーから始まった。僕は何かを振り切るように、勢い良く飛び降りるようにして、腰高のカウンターチェアを離れた。駆け抜けるようにしてダンスフロアに飛び込み、皆が避けるようにぽっかりと開いた真ん中で踊り始めた。
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随分長い間トイレに篭っていたようで、次のステージまでは残り5分。ステージが始まれば、きっとこんな嫌な気分とはおさらば出来る。僕は頑なにそう信じて、その時を待っていた。
そのステージも、やはり出だしから踊れるミディアムテンポのナンバーから始まった。僕は何かを振り切るように、勢い良く飛び降りるようにして、腰高のカウンターチェアを離れた。駆け抜けるようにしてダンスフロアに飛び込み、皆が避けるようにぽっかりと開いた真ん中で踊り始めた。
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09.30.23:18
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 34回目
とてもドアを開けられる状態では無い僕は、その場にいつまでも立ち尽くしている訳にもいかず、止む無く個室に引き篭もった。用も無いのに便器に腰掛けた僕は、ずっと応えの無い自問自答を繰返していた。自分のダンスの完成度。その他大勢の人間と比べて、いけない所は無かったか。ふらついたり、躓いたりした事は無かったか。そんな事を考えながらステージを振り返ることなど初めてだったが、そうしていなければ落ち着かないのだ。
そうやって半ば強引に僕が導き出した答えは、軽蔑されていたのは僕では無いという、それこそ自意識過剰に満ち溢れたものだった。
僕には何の落ち度も無い。
軽蔑され、嘲笑を買うような如何様な行為も行ってはいない。
僕はほとんど自分に言い聞かせるようにして、トイレを後にした。そうやって自信を取り戻した僕だったが、あの若者グループの席の前では、自然と早足になり、顔を背けて通り過ぎていた。
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そうやって半ば強引に僕が導き出した答えは、軽蔑されていたのは僕では無いという、それこそ自意識過剰に満ち溢れたものだった。
僕には何の落ち度も無い。
軽蔑され、嘲笑を買うような如何様な行為も行ってはいない。
僕はほとんど自分に言い聞かせるようにして、トイレを後にした。そうやって自信を取り戻した僕だったが、あの若者グループの席の前では、自然と早足になり、顔を背けて通り過ぎていた。
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09.29.23:31
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 33回目
「特にほら、真ん中で踊ってた奴」
「あ~。すごかったよな。自意識過剰ってやつ?」
「そうそう」
ノブを持つ手が震え、耐え切れなくなった僕は、思わず後退りしていた。『真ん中』と言う言葉だけで特定できる人間と言えば、明らかに他とは異なるステップを踏んでいた僕以外考えられなかった。
彼らの話題の中心に僕が居たなんて、思いもしなかった事だった。てっきり、僕を除くその他大勢、つまりは”酔っ払いの親父ダンサーズ”に向けられたものとばかり思っていたからだ。
まさに自意識過剰。返す言葉さえ思い浮かばない。気が付けば、さっき洗い流したばかりの額に、先程までとは異なる汗が浮いている。膝は小刻みに震え、立っているにもかかわらず、まるで貧乏揺すりをしているかのようだ。
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「あ~。すごかったよな。自意識過剰ってやつ?」
「そうそう」
ノブを持つ手が震え、耐え切れなくなった僕は、思わず後退りしていた。『真ん中』と言う言葉だけで特定できる人間と言えば、明らかに他とは異なるステップを踏んでいた僕以外考えられなかった。
彼らの話題の中心に僕が居たなんて、思いもしなかった事だった。てっきり、僕を除くその他大勢、つまりは”酔っ払いの親父ダンサーズ”に向けられたものとばかり思っていたからだ。
まさに自意識過剰。返す言葉さえ思い浮かばない。気が付けば、さっき洗い流したばかりの額に、先程までとは異なる汗が浮いている。膝は小刻みに震え、立っているにもかかわらず、まるで貧乏揺すりをしているかのようだ。
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09.27.22:28
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 32回目
そのままトイレへと向かい、流れる汗を洗い流し、ドアを開けようとした時だった。扉のすぐ向こうの笑い声が僕の耳に飛び込んできた。その声は明らかに蔑みと嘲りに満ちていた。僕は思わず、ドアの側で耳をそばだてていた。
声の主は女性が二人に男性が一人。声の感じからして、あの若い集団だろうか。会話の内容は、踊っている人間に対する軽蔑だった。
恥ずかしげも無く。いい年をして。自分に陶酔している。云々。はっきりとは聞き取れないが、凡そそんな内容だった。その合間に忌々しく、憎悪すら覚える嘲笑が入るのだ。誰であろうと、人の楽しみを軽蔑したり非難する事は許されることでは無い。たとえその対象が、酔っ払いの親父ダンサーズであってもだ。
僕が熱いものを胸にもう一度ドアを開けようとしたその時、僕を愕然とさせる言葉が脳天に響いた。
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声の主は女性が二人に男性が一人。声の感じからして、あの若い集団だろうか。会話の内容は、踊っている人間に対する軽蔑だった。
恥ずかしげも無く。いい年をして。自分に陶酔している。云々。はっきりとは聞き取れないが、凡そそんな内容だった。その合間に忌々しく、憎悪すら覚える嘲笑が入るのだ。誰であろうと、人の楽しみを軽蔑したり非難する事は許されることでは無い。たとえその対象が、酔っ払いの親父ダンサーズであってもだ。
僕が熱いものを胸にもう一度ドアを開けようとしたその時、僕を愕然とさせる言葉が脳天に響いた。
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