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  • 07/27/03:24

09.21.22:45

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 26回目

「ちょっと、アンタ…」
 Richardが僕の言葉を制した。酔いが回った頭では、すっきりと我に返ることは無かったが、それでも僕は口を噤んだ。もしかすると、すこし憮然とした表情になっていたかもしれない。
「少し落ち着けよ」
 Richardがなだめる様な声でそう言った。僕は喋り過ぎたせいなのか、酒で焼けているのか分からない喉を潤す為に、再びグラスに手を伸ばした。その手をRichardが慌てたような素振りで止めた。僕の手首を握る彼の握力は尋常ではなかった。酔っているせいか、あまり痛みは感じなかったが、振りほどこうにもびくともしないのだ。僕は諦め、手の力をぬいた。
「あんまり酔いすぎると追い出されるぜ」
 そう言うと、Richardは自分のグラスに僕の酒を移し、かわりにミネラルとロックで僕のグラスを満たした。酔いで回らない頭でも、僕は少し彼を見直していた。案外、良い奴かもしれない……と。

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09.20.22:04

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 25回目

 彼らはステージが終わってしばらくしてから、席に戻ってきた。僕は焦点の合わない目で彼らを出迎え、とたんに僕の意思とは無関係に近い状態で、言葉が口から飛び出していた。
「Lover Shakersの方…だったんですねぇ。昔あなた達を…見ながらダンスを覚えた…もんですよぉ。いやぁ。ぜんぜん衰えて…ないですねぇ」
 急に饒舌になった僕に、Richardは面食らったようだったが、僕の口は止まらなかった。
「他の人とはぜんぜん違うんですよねぇ。いいよなぁ」
 その後も、僕はほとんど夢中になって、彼らを褒めちぎっていた。自分でも何故そんな事を口走っているのかは分からない。酔った勢いだけでは済まされない何かが、僕を突き動かしていた。後になって思えば、やはり彼らが羨ましかっただけなのかもしれない。

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09.19.23:50

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 24回目

 自然とグラスを開けるピッチが上がっていった。やり切れない思いが、さらに拍車をかける。僕はロックやミネラルを入れるのも面倒になり、安物のウィスキーだけを喉に流し込んでいた。
 ダンスフロアで踊っている人も、席に座って演奏に耳を傾けている人も、楽しげに、或いはリラックスした表情で、今この時を楽しんでいる。唯一人、楽しみもせずグラスを空けている自分が虚しく、情けなく感じるのにそう時間はかからなかった。何故僕は、お金を払ってまで、こんな惨めな思いをしにこの場所に足を運んでいるのだろう。
 目の前の景色と、自分の体がゆらゆらと揺れ始め、全てがどうでもよくなった頃、僕にとっての最初のステージが終わりを迎えた。

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09.18.23:40

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 23回目

 このステージのスローナンバーは♪スタンド・バイ・ミー♪。スティーブン・キング原作の同名の映画で有名になったあの曲だ。彼らはこの曲も席に戻らず、チークダンスを踊る何組かのカップルの隙間を埋めるように、ステップを踏み続けている。

♪If the sky that we look upon Should tumble and fall 
 Or the mountain Should crumble to the sea 
 I won't cry, I won't cry  No, I won't shed a tear
 Just as long as you stand stand by me♪
 何だか無性に泣けそうになった。僕には側にいてくれる相手さえ居ない。
 そうなのだ。僕と彼らの違い。それは彼らには側にいてくれる誰かが居て、僕には居ないと言う事。それだけなのかもしれない。3人の仲間のうち、一人でも隣に居てくれていたならば、僕は今もダンスフロアの中、笑顔でステップを踏んでいたのだろうか。

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09.17.22:55

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 22回目

 僕の心は浮き立ちはするのだが、それが行動にはつながらない。僕の心に掛けられた錠前は、その強度を保持したまま、僕を縛り付けている。情けない話だが、それに抗う力は、今の僕には無い。

 羨望と諦観を含んだ瞳で彼らを見ているうちに、僕はある事に気付いた。
 確か、当時の彼らは3人組だったはずだ。僕達が彼らを見るときは常に、3つの背中がそこにあったはずだ。それが、今では一人欠けている。彼らにも確実に時の流れと言うものが襲い掛かっているのだろうか。ふと、そんな事を思った。
 でも、僕と彼らには決定的な差がある。僕は時と言う名の潮流に流れに流され、ついにカウンター席という名の浜辺に座礁し、陸に追いやられた鯨のように、自らの力で大海原に戻ることすら出来ないでいる。
 だが彼らは、一人大波にさらわれてしまっても、まだその奔流に逆らい続け、昔と変わらずダンスフロアに留まり続けている。
 この差は何処から生まれてきているのだろう。僕の彼らに対する興味は、昔以上に膨らんで行った。

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