01.28.20:47
[PR]
07.19.23:39
小説 ~Lover Shakers~その12
僕は、夜の物静かで、それでいてどこかピンと張り詰めた空気が好きだ。誰もいない通りに立つと、目の前に広がるこの世界の、王にでもなったような気分になる。僕を阻む者も、蔑む者も、叱り付ける者も、虐げる者もいない。この瞬間、確かに僕は自由なのだ。そう感じられる夜が好きだ。
そんな中でも、今夜はどこか特別だった。実に良い夜だ。これまで生きてきた二十一年の歳月の中で、最高の夜かもしれない。思わず手を広げて、この世界中の全てを抱きしめたい気分だ。一人だったら、間違いなく僕はそうしただろう。
今日の最終ステージも、楽しい気分のまま終わりを迎えた。僕らがチーム名を公表したステージで、僕らを睨みつけていたマジックトーンズの面々は、最終ステージを待たずに、早々に引き上げていった。彼らは帰り際、これまで以上にあからさまな敵対心を燃やした目を僕達に向けながら去っていった。少し調子に乗りすぎたのかもしれない。店を出たとたんに、待ち伏せに合い、喧嘩になるのではないか。ふとそう思った。そんな事になれば、せっかくの楽しい夜が、全て台無しである。僕は微かに彼らの報復を恐れていた。
最後まで残っていたのは、僕らと僅か二組五名だけだった。それでも十分楽しかったのは、その全員がフロアに飛び出して、最後まで踊ったからであり、その顔は一点の曇りの無い笑顔で満たされていたからだろう。店を出るときには、あての無い再開の約束まで交わして、店を出た。携帯電話など無かった時代だ。メールアドレスの交換など、存在しない。
Lover Shakersの門出としては上々の滑り出しだ。こんなことなら、もっと早くに公表するべきだったと、Richardが興奮冷めやらぬといった顔で言っている。それがたとえ、その名を耳にした人達にとって、この夜の終わりと共に消え去ってしまう記憶であったとしても、僕達は満足だった。
心の片隅で心配していた、マジックトーンズの待ち伏せというものは杞憂に終わった。考えてみれば、彼らが帰ってからもう一時間半近くが経過している。それに、この店の出入り口を視界に入れられる場所に、開いている深夜喫茶などは無い。外で待ち伏せの為に一時間半も待っていられるわけがなかった。
いつの間にやら駐車場に着いた。点在する街灯がぼんやりとした明かりで照らし出される中、停まっている車は、僕のワーゲンと、Mickyのヒルマンミンクス、Richardの古いクラウンのステーションワゴンだけだった。止めた場所がバラバラの為、点在していたのを、僕達は慎重に一ケ所に集めた。そして、僕のワーゲンに三人で乗り込んで、寝転がった。
僕のワーゲンは、キャンパー仕様になっている。シートを広げれば、楽にとは言えないが、大人四人までが寝ることが出来る。ルーバー式の窓を開け、備え付けの蚊取り線香を炊けば、夏場でも何とかなる。
興奮冷めやらぬ僕は、しばらく天井を見詰めながら、起きていた。二人も同じらしく、顔を掻いてみたり、もぞもぞと体を動かしていて、眠っている様子は無い。
「Jerry。まだ、忘れられないのか」
唐突にMIckyが聞いてきた。もちろん、僕の最後の失恋のことを言っているのだろう。もしかすると、あのスローナンバーの時に、ぼくが物憂げな顔をしていたのに気付いていたのかもしれない。
僕は、「ああ」と、軽く返事をした。
「もう、どれくらい経つ?」
Richardが重ねて問いかけてくる。僕を心配してくれているのもあるが、基本的に、Richardはこういう話題が好きなのだ。いや、Richardだけでなく、男同士で顔をそろえると、決まって出る話題なのかもしれない。
「もう、いいじゃないか。しみったれた話じゃ、良い夜が台無しだ」
僕は、この話題を遮った。実際、今は思い出したくも、話したくも無かった。今夜がHAPPYに終わってゆく。それだけで満足だった。
「それもそうだな」
Mickyのこの言葉を最後に、僕達はやがて眠りに落ちて行った。
*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
ネット小説ランキング>現代シリアス部門>「小説Lover Shakers」に投票 (月1回)
07.18.00:45
小説 ~Lover Shakers~その11
「リクエストが通って無いのか」
曲の合間に、Richardが苛立たしげに、そう言った。僕は、後半にアップテンポのナンバーを集めているのだろうと、希望的観測を示してRichardの気を鎮め、Mickyは、別にかからなければ、それはそれで良いじゃないかと、消極的な意見を言って、Richardのヒンシュクを買っていた。
続いてお決まりのスローナンバー。曲はプラターズの”オンリー・ユー”。
この時間になると、チークを踊る人も殆どいない。マジックトーンズの面々も、カップルであるにもかかわらず踊ってはいない。殆ど泥酔状態の熟年カップルが、千鳥足で、それでいて笑顔を絶やさずに、仲良くチークを踊っているのみである。
曲が終わると、まばらな拍手と共にライトが輝きを増し、男女ボーカルのMCがはじまった。声はまだまだ元気だが、この選曲を考えれば、客数が減ったこともあってか、あまりやる気は感じられない。
女性ボーカルの元気な声が、このステージもラスト3曲であることを告げた。曲数まで2曲も削っている。完全な手抜きもいいところだ。せっかくの楽しい夜も、終盤でこれでは台無しである。僕は秘かに怒りを燃やしていた。
だが、女性ボーカルの次の言葉が僕の怒りを雲散霧消させた。残り3曲の1曲目はLover Shakersさんからリクエストを頂いた、Thinkであると、高らかに宣言されたのだ。僕らは一も二も無く立ち上がった。
「Lover Shakersさんはどちらですか?」
おまけに僕らのシナリオどおり、話題にまで上らそうとしてくれている。僕らは、まるで授業参観の小学生のように、高らかに手を上げて見せた。
「ダンスチームのLover Shakersさんでーす。はい拍手」
バンドの演奏付きで紹介された僕らは、とっさに手を広げてポーズを作って見せた。僕らの新しい門出だ。若干の羞恥心と、それを上回る恍惚感で、僕らのテンションはいやおう無く上がった。ちらりとマジックトーンズの席に目をやると、ハコフグが殆ど睨みつけるような視線を、僕達に注いでいる。僕は相手になってやるといわんばかりに、あごを上げて、かすかな笑みを浮かべて見せてやった。
「では、Lover Shakersの皆さんと盛り上がっていきましょう」
女性ボーカルのこの言葉を合図に、演奏が始まる。アレサ・フランクリン程ではないが、パンチの効いた歌声で曲が始まる。僕らは映画ブルースブラザーズのジェイクとエルウッドのように、少しおどけた調子でステップを踏んだ。
客は少ないながらも、僕達のほかにも二,三組、五,六人がフロアで踊っている。僕らのステップを見ながら、真似をしようとする人達。関係なく楽しげに踊る人達。どれも笑顔に満ちていて、僕らも目が合えば、笑顔を返した。
驕りかもしれないが、この時は確かに僕らがこのフロアの核となっていた。僕らがこのステージを盛り上げているのだという気さえする。人数こそ少ないが、僕らにとって、このステージが、今日一番のステージになった。
その反面、僕らが気に入らないのか、このステージでは、最後までマジックトーンズが踊ることは無かったのだった。
*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
ネット小説ランキング>現代シリアス部門>「小説Lover Shakers」に投票 (月1回)
07.17.23:21
ダンス教室その2 ボックスステップ アレンジその1
2回目の今日は、ボックスステップのバリエーションの一つを紹介する。
このステップでは、動きのテンポが途中で変わる。①~④までは2テンポで1つの動き。⑤~⑫までは1テンポにつき一つの動きとなる。気をつけよう。
では、はじまりはじまり
① まずは、基本と同じく、右足を前に踏み出す。ただ、基本と違うところは、踏み出した右足をひねって、ほとんど右を向くような状態で、足をフロアに下ろすことだ。足をくじいたりしないように注意しよう。
② これも基本と同じに見えるが、①の状態で、足を右にひねっている為、体全体が、右を向くことになる。
③右足を斜めに踏み出す。この図では、べったりと足をフロアについているように見えるが、ここではつま先を上げ、カカトのみを床につける。つまり重心は左足に残したままと言うことだ。
④右足を左足の後ろに持ってゆき、つま先だけを床につける。図が手抜きでスンマセン。
⑤右足を、体をひねって前向きに戻しつつ、最初の位置より自分の肩幅分ぐらい右の位置に。この状態の時には、体は右斜め前を向いている状態になる。
⑥左足を右足の横に。この時も、着くのはつま先だけ。この状態で、体は完全に前を向く。
⑦普通に左右にステップを踏むのと同じ要領、というか、そのまま左右ステップ。左右ステップのコツは、右足を左足に、左足を右足に寄せる場合は、つま先だけつけるようにすると、かっこよく、スムーズに体重移動ができる。
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
ボックスステップ アレンジその1を使用するダンス(思いつく限り)
・ダイアナ(Aメロ) ・涙のバースデーパーティー(間奏)
・悲しき街角(Aメロ) ・リトル・ダーリン(ほぼ全部)
・子供じゃないのよ(Aメロ) ・Oh!キャロル(ほぼ全部)
・ルイジアナママ(Aメロ) ・ラストダンスは私に(Aメロ)
・涙の16才
07.17.00:01
小説 ~Lover Shakers~その10
ハコフグ達は、さぞ驚いているだろう。自分達の誘いを一蹴する者が居たなんて、と。それほど彼らは驕りに満ちているのだ。一言も話さなかった今まででも、言葉を交わした今ならなおさら、彼らの傲慢さが手に取るように分かる。
彼らもまた、踊るのがただ楽しくて、ここに通うようになったのだとは思う。だが、今はもう、その楽しさの本質が何処にあるのかを、見失ってしまっているのだ。ダンスが上手くなるにつれ、簡単なステップさえまともに踏めない人たちが、間抜けのように見えてしまったのかもしれない。
確かに、何人かでステップを揃え、上手に踊ることは悪いことではないし、僕達もそういう、言わば『見せるダンス』を目指していることは確かだ。だが、それはダンスの一つの楽しみ方であって、全てではない。ただ単に、リズムに合わせて体を動かすことも、立派なダンスなのだ。特に、この店のような、ただ楽しむ為に来ている人たちにとっては、それで十分だと思う。それを馬鹿にしたり、見下したりする権利は、誰の手にも無いのだ。彼らはそれを忘れている。
「Jerryは少し後悔してるんじゃないのか」
冷やかすように、Richardが言った。
僕は、大きく手を振って見せた。
「冗談はやめてくれ。誰が好んで嫌われ者になるんだ」
「それもそうだな」
Richardは笑って、そう答えた。
そこで、僕は一つの提案をした。店のリクエストカードに、『Lover Shakers』名義で、リクエストを出すのである。リクエストした曲がかかれば、それが誰のリクエストであるのかを、MCで紹介されることになっている。個人名ではないリクエスト者を、バンドが話題として取り上げてくれれば、そのチームとは誰なのかがはっきりする。今まで自称でしかなかったチーム名を公表し、マジックトーンズの奴らに、僕達がチームであることを、知らしめ、ダメ押しを押してやるのだ。
そう言う所はシャイなMickyは若干渋ったが、客数もずいぶん減っていることもあって、何とか納得した。恐らく、来た当初までとは言わなくても、程よく客が居る状態なら、絶対に反対したはずである。Richardは殆ど一も二も無く賛成というようりは、完全に乗り気だった。
リクエスト曲は、今日一度もかかっていない、アレサ・フランクリンの「シンク~Think~」。映画ブルースブラザーズで、彼女自身が歌ったソウルナンバーだ。
そして名前の欄に、まるでポスターのロゴを入れるように、丁寧に、
~LOVER SHAKERS~
と、記した。僕らは顔を見合わせにんまりと笑うと、そのリクエストカードを、ウェイターに手渡したのだった。
*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
ネット小説ランキング>現代シリアス部門>「小説Lover Shakers」に投票 (月1回)
07.16.22:08
ダンス教室その1 ボックスステップ基本編
第1回目は、ボックスステップだ。このステップは、僕らが踊る中での話だが、ポップスのミディアムテンポのナンバーで、数多く登場し、また、基本編とあるとおり、様々なバリエーションがあるステップでもある。
では、はじまりはじまり。
ボックスステップ基本編を使用するダンス(思いつく限り)
・パイナップルプリンセス(サビ)*テンポが速い
・恋のバカンス(Aメロ)
・ハローメリールー(サビ)
・カラーに口紅(Bメロ)*ほんの少しだけ…
・恋の片道切符(サビ)*テンポが一番速い殆ど飛んでいる感じ…
・悲しき街角(サビ)*上に同じ
また思いついたら、書き足すが、今のところこのぐらい…。また、ステップは地域や店舗によって異なる。極論で言えば、どの曲に使用しても言い訳で、自分でこれはと思った曲や、上手な人がボックスを踏んでいたら、合わせて見ると良いだろう。
