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  • 05/15/09:18

07.17.00:01

小説 ~Lover Shakers~その10

 自分達の席に戻った僕達は、晴れ晴れとした気分だった。二人の顔にも気負った様子は無い。自分達の本心を、素直に相手にぶつける事が出来た顔だった。彼らの僕達に対する今後の対応に、一抹の不安を感じないわけではなかったが、後悔などは無い。あるわけが無い。そういう顔だった。
 ハコフグ達は、さぞ驚いているだろう。自分達の誘いを一蹴する者が居たなんて、と。それほど彼らは驕りに満ちているのだ。一言も話さなかった今まででも、言葉を交わした今ならなおさら、彼らの傲慢さが手に取るように分かる。
 彼らもまた、踊るのがただ楽しくて、ここに通うようになったのだとは思う。だが、今はもう、その楽しさの本質が何処にあるのかを、見失ってしまっているのだ。ダンスが上手くなるにつれ、簡単なステップさえまともに踏めない人たちが、間抜けのように見えてしまったのかもしれない。
 確かに、何人かでステップを揃え、上手に踊ることは悪いことではないし、僕達もそういう、言わば『見せるダンス』を目指していることは確かだ。だが、それはダンスの一つの楽しみ方であって、全てではない。ただ単に、リズムに合わせて体を動かすことも、立派なダンスなのだ。特に、この店のような、ただ楽しむ為に来ている人たちにとっては、それで十分だと思う。それを馬鹿にしたり、見下したりする権利は、誰の手にも無いのだ。彼らはそれを忘れている。

「Jerryは少し後悔してるんじゃないのか」
 冷やかすように、Richardが言った。
 僕は、大きく手を振って見せた。
「冗談はやめてくれ。誰が好んで嫌われ者になるんだ」
「それもそうだな」
 Richardは笑って、そう答えた。
 そこで、僕は一つの提案をした。店のリクエストカードに、『Lover Shakers』名義で、リクエストを出すのである。リクエストした曲がかかれば、それが誰のリクエストであるのかを、MCで紹介されることになっている。個人名ではないリクエスト者を、バンドが話題として取り上げてくれれば、そのチームとは誰なのかがはっきりする。今まで自称でしかなかったチーム名を公表し、マジックトーンズの奴らに、僕達がチームであることを、知らしめ、ダメ押しを押してやるのだ。
 そう言う所はシャイなMickyは若干渋ったが、客数もずいぶん減っていることもあって、何とか納得した。恐らく、来た当初までとは言わなくても、程よく客が居る状態なら、絶対に反対したはずである。Richardは殆ど一も二も無く賛成というようりは、完全に乗り気だった。
 リクエスト曲は、今日一度もかかっていない、アレサ・フランクリンの「シンク~Think~」。映画ブルースブラザーズで、彼女自身が歌ったソウルナンバーだ。
 そして名前の欄に、まるでポスターのロゴを入れるように、丁寧に、
~LOVER SHAKERS~
と、記した。僕らは顔を見合わせにんまりと笑うと、そのリクエストカードを、ウェイターに手渡したのだった。

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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

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