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  • 07/20/17:46

11.01.23:45

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 56回目 

 階段を上りきり、いよいよ最後の扉を開けようとしたその時、再びRichardの声が響いた。話は終わっていないとか、待てとか、そう言った類の言葉だ。僕は振り返るどころか、何の反応も示さずに、聞こえない振りを装い、これまで同様緩慢な動作でドアを押し開いた。
 だがだからと言って、僕が本当に何も感じなかったかと言うと、そうでは無い。僕は内心、心底うんざりしていた。未練たらしい悪女に付き纏われた様な気分だ。だが、彼に嫌悪感を覚える度に、僕の心はダイアナから離れて行く気がする。人間無理強いされればされるほど、反撥心が強まるのだと言う事を、彼は学習するべきなのかもしれない。
 背後で鈍い音が響く。流石に何事かと振り返った僕の目に飛び込んできたのは、扉を開け仁王立ちするRichardと、彼を追いかけてきた風情のMickyの姿だった。
 振り返ってしまったことを後悔しても、まさに後悔先に立たずだ。どうやら静かに幕を引きたいと言う僕の願望は叶えられそうに無い。どうやら彼等は、僕と一悶着起こさなければ気が済まないらしいとしか思えない。僕は争いを好むほうでは無いが、追い詰められれば、もう前に出るしかない。腹を括った途端に、僕の中で行き場をなくしていた憤怒は、獲物を捉えた猛禽類のように嬉々として、一直線に襲い掛かる瞬間を待ち望んでいた。
 
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10.30.22:27

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 55回目 

 これ以上彼らと唾を飛ばしあう事さえ徒労に感じた僕は、無言のまま席を立ち、伝票を片手にレジカウンターを目指した。Richardの制止の声が背後から届いたが、僕はもう振り返らない。ある意味、僕の苦渋の選択を、彼が後押ししたのだ。そういう意味では、彼に感謝しなければならないのかもしれない。今日が最後と決めて、いざその最後の瞬間が目と鼻の先まで迫ってみると、僕は何とつまらない事に貴重な時間を割いて来たのかとさえ感じる。こんな事ならば、もっと早くに決断を下すべきだったのだ。そんな事を考えながら、僕は清算を済ませ、二度と触れることは無いであろうドアノブを押し、階段をゆっくりと上がった。
 これも僕にとっては意外な事だった。僕は帰るときはきっと、未練を断ち切るために階段を駆け上がるものだと思っていたからだ。僕にはもうダイアナに対する未練は微塵も無い。そう感じられた一瞬だった。

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10.29.22:45

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 54回目 

 捲くし立てるような僕の言葉に反応したのは彼らだけでは無い。カウンター席をはじめ、テーブル席の面々、さらには近くを通りかかったウェイターも何事かとこちらに視線を投げかけている。心の隅で己の失敗を恥じたが、昂ぶり荒れ狂った感情が、いとも容易く雲散霧消させてしまった。
 Richardの辛辣な言葉はなおも続く。
「アンタそんな事本気で考えてたのか?被害者意識もいい加減にしろよな。そんなことで俺達がアンタを止めると、本気で思ってんのか?俺達が言いたいのはそんな事じゃない。アンタはまだ踊りたくて、今もこうしてこの場所にいるんだろ?だったらなんで諦めちまうんだ。笑われたり馬鹿にされたってそれがどうしたって言うんだ。肝心なのはアンタが楽しんでるかどうかって事だろ?そんなもんに楽しみを奪われて、アンタ悔しくないのか!」
 どうしてこうも人の神経を逆撫でする事ばかり口にするのだろう。彼らの思考は、仲間が居るからこそ言えるもので、僕にとっては机上の空論に過ぎない。恐らく彼らには、僕と同じ境遇を味あわなければ、けして理解できないだろう。

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10.27.22:48

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 53回目 

 とたんにRichardの表情が変わった。まさに鬼気迫るといった感じだった。自分の言葉の何が彼の気に障ったのかさえわからない僕は、間抜けな表情を浮かべていただろう。
「いいことあるか。今もステージの間も、アンタの顔は何かに納得したような顔じゃない。アンタがMickyの話を聞いてどんな答えを出したのか知らないが、その答えにさえ、あんたは納得してないんじゃないのか?」
 図星にめがけてまともにど真ん中ストレートを叩き込まれた僕の感情は、その反動で、もう押さえ付ける事はできなかった。
「だから、もう良いって言っているだろう。僕はもうこの店には来ない。もうアンタ達にも会うことも無いから、関係ないだろう。それとも何か?死に行くオールディーズを救う為に躍れもしない僕をこの店に縛り付けて延命を図ろうとでも言うのか?そんなのはごめんだ」

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10.26.22:27

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 52回目 

 そんな事はあれ以来何度も自問自答を繰返してきた事だ。だが確信を得るには正否共に決定的な証拠は無い。だが、ダンスフロアの真ん中と言う言葉だけで相互理解が得られるほど特徴的だった人物は、他とは明らかに違うステップを踏んでいた僕だけという状況証拠ならばある。さしずめ限りなく黒に近いグレーと言ったところだ。もちろん、そうでなければどんなに良いかと思う事は何度もあったが、一度卑屈な方向に傾いてしまった僕の心は、そんな気休めで好転に向かうほど軽くは無かったのだ。
 まるで塞がりかけた傷口を無理矢理こじ開けられたような感じだ。僕にとってはもうケリをつけた話など、もう聞きたくは無かった。
 僕は自分の頭に急速に血液が駆け上がって行くのを感じていたが、すんでの所で感情を抑え、営業スマイルを作った。
「もういいんですよ」

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