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  • 08/24/15:30

09.12.23:53

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その7

 彼女に告白をしたのは、高校二年のときだった。 彼女とはクラスも通学路も同じで、自然と同じ時間をすごすことが多く、気がついたら一方的に好きになっていた。恋愛に不慣れな僕は、彼女を意識すればするほど、彼女とまともに話すことすらできなくなっていった。これではいけない、何とかしなければと、思えば思うほど、僕の思考は硬化してゆく。その反面、彼女への思いは日増しに強くなり、僕はふられる事がほぼ確実であるにもかかわらず、その思いを伝えずには居られないところまで追い込まれていた。その心境がどういう心境なのか、口で説明するのは難しい。僕自身、よく分かっていないのかもしれない。
 ただ、伝えたい思いがあり、伝えたい言葉がある。その思いが大きく膨らみすぎて、自分の心のうちに入れていると、心が壊れてしまうのかもしれない。もしくはただ単に、実るはずの無い恋に自ら決着をつけるために、あえて答えを出しただけなのかもしれない。
 ともかく僕はふられた。もちろん、あのときから時間がたち、別の女性に恋をしたこともあり、彼女に対して昔と同じ感情を抱いているわけではない。だが、昔好きだった直美を目の前に、僕の心に少し風が吹き始めたことは確かだ。
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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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09.11.00:02

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その6

 僕たちはコーヒー2杯だけで3時間近くも喫茶店で時間をつぶし、待ち合わせの元町駅へと向かった。喫茶店から駅までは歩いて5分もかからない。駅へと向かうRichardの足取りは、ひときわ軽い。新しい服を身に纏い、ただでさえ三人の中で一番陽気なRichardが、いつもの五割り増しはあろうかという陽気さと、新しい服を誇らしげに感じながら町を闊歩する姿は、けして悪い気はしない。Richardのそんな姿を見ながら僕とMickyは、少し後を歩いていった。それは、Richardにとって、今夜が幸せな夜になるよう、祈らずには居られない光景だった。

 僕達が駅に着いたのは、待ち合わせの5分前だったが、すでに由美子たちは来ていた。由美子は学生時代、クラスの男子の中で一番人気の女の子だった。好きか嫌いかは別として、整った顔立ちでかわいい顔をしている。僕は、ほかに好きな女の子がいたから、それほど意識したことは無かったが、彼女のことを悪く言う男は居なかったように思う。その頃の面影そのままに、僕は目にしたことの無い私服姿の由美子は、僕の心まで奪う程ではないにしても、人ごみの中でも、ひときわ目立つ存在だった。Richardはほとんど翔るようにして、由美子の元へ走ってゆく。
 僕とMickyは二人の邪魔をしないよう、なるべくゆっくりと、近づいていった。近づくにつれ、僕の目はある一点に釘付けにならざるを得なかった。それはもちろん由美子ではない。由美子の隣に居る女性である。それは僕がはじめて告白をした相手である、直美だった。

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09.09.23:35

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その5

 疲れきった僕たちに、店を選んでいる余裕はない。入った店は、週末の割には、あまり人影の少ない寂れた店だった。こればかりはさわやかな音を響かせるドアベルの音を聞きながら中に入り、奥のテーブルの座ると軋みそうな古ぼけた椅子に腰掛けると、”ビッグファットママ”という表現がぴったりの恰幅のいいご婦人が、メニューと水の入ったグラスを片手にやってきた。僕らはメニューも見ずに、その場ですぐにアイスコーヒーを三つを注文した。
 ビッグファットママから注文を聞いて、ご婦人とは対照的な痩せぎすで口ひげを生やした、いかにもというマスターが、コーヒーを立て始める。店内に流れる音楽はジャズだろうか。興味のある音楽以外は、まるで知識のない僕たちにはよくわからないが、総体的に雰囲気は悪くない。どうしてこんなに寂れているのかが不思議なほどだ。
 三人そろって運ばれてきたアイスコーヒーを飲みながら、話題は由美子が誰を連れてくるかということだった。最初に口に出したのはMicky。彼は三人の中で唯一の彼女持ちだが、だからと言って他の異性に興味が無い訳ではないらしい。彼の性格からして、それは浮気心とは少し違うのかもしれないが、そればかりは本人以外、知る由も無い。
 僕はあまり興味は沸かなかったが、それでも懐かしい顔に合えるかもしれないという思いはある。先述したとおり、由美子はRichardが学生時代から思いを寄せている女性である。それも学校の外で出会った訳ではない。つまり、僕たち三人と彼女は同級生なのである。その彼女が連れてくる友達というのが、学生時代の友人であってもなんら不思議ではない。僕達と会うと言うならなお更だ。別に学生時代を懐かしむほど年を取った訳でもないが、久しぶりに顔を合わすと言うことは、否応無くそう言った感情を抱かせるようだ。
「誰を連れてくるのか、聞いてないのかよ」
 僕たちの会話をニヤニヤしながら聞いていたRichardに、Mickyが気づいて、そう訊いた。
「いや」
 Richardは愛煙しているラークマイルドを一吸いしながら、そう答えた。だが、その目は聞いていると物語っている。だが、今回は、由美子との電話の件のように焦らしているのではなく、本当に喋る気が無いと、顔に書いてある。もっともその理由はわからないが。
 

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08.29.23:33

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その4

 それにしても、Richardは逞しい。普通、二回も振られた相手に、ここまで頑張れるものだろうか。それに、今度は上手くいくという自信はどこから涌いてくるのだろうか。ともかくRichardがまだ由美子の事を諦めていない以上、その想いは誰にも止める事はできない。それがどんなに無謀な行為であろうとも、それでもなお想いを抱かずには居られないのが恋なのだ。少なくとも僕はそう思う。

 皆で会う日は、驚くほど早く訪れた。僕らは毎週のようにダイアナに来ているのだから、いつでも良いが、由美子の方が友達と予定を合わせるのに時間を要するだろうから、早くても二、三週間後だろうと思っていたのだが、結局は翌週の土曜日になった。僕とMickyは昼間からRichardに呼び出され、新しい服の買い物に付き合わされていた。思えば、こうして昼間から会うのは随分久しぶりな気がする。卒業して、皆就職してからは、会うのはほとんど夜になった。タバコを吸い、酒を飲む行為が社会人の、いや大人の特権のような気がして、そのスタイルに固執しているうちに、ダイアナと出会ったためだ。
 Richardはすでに一時間近くも、Mickyの勧めで来た古着屋で悩み続けている。色々と物色して、体に当ててみるのだが、どうも納得がいくものが無いらしい。僕たちも一緒になって、Richardに似合う服を探すのだが、なかなか決まらない。店を転々とする事三時間、ようやくRichardの服選びが終わった。Richardが選んだのは、深い赤地に襟と袖の先が黒の開襟シャツと、黒のヴィンテージ物のスラックス。靴もヴィンテージ物の黒の革靴。さすがに大好きな娘に会うだけあって、いつもとは気合の入り方が違う。
 由美子達とは、元町の駅で待ち合わせになっている。今はすでに四時半。待ち合わせの時間は七時半だが、一度帰るには時間が無いし、待つには時間がありすぎる。そこで僕たちは、これまで付き合ったお礼代わりに、Richardに奢らせて、近場のカフェに行く事にした。三時間も付き合わされたのだ。コーヒー代ぐらい安いものだ。

 

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08.29.00:01

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1その3

 ステージが終わった後、僕たちは三人揃ってトイレに行った後、席に戻った。その間中、僕とMickyは由美子と何を話していたのかと問い詰めたが、Richardは話そうとはしなかった。それは話したくないと言うのではなく、どこかもったいぶっているような感じだった。
「で、何があったんだよ」
 席に着き、水割りを煽った後、Mickyが出し抜けに訊いた。僕も続いて、「もういい加減教えてくれても良いだろう」と、促した。
 彼に何か良い事が起こったのは、間違いない。だから厳密に言えば、この問いかけは、Richardと由美子の間に何があったのかを聞いているのではない。ただ、彼の身に起こった幸運な出来事を聞いて、その喜びを分かち合いたいだけなのだ。
 それでもRichardは、笑顔で「どうしようかなぁ」などとのたまって、話そうとはしない。しばらくそんな押し問答が続いた後、ついにMickyが、「もういいよ。なぁ」と僕に向かって言った。僕も、「そんなに話したくないなら、いいよ」と、Richardに言った。
 もともと、もったいぶっていただけのRichardは、血相を変えて何度も謝りながら、訊いてくれと懇願してきた。僕たちは、しばらく知らぬ振りをしていたが、そこまで言うなら、聞いてやろうと、答えた。

 聞いてみると、Richardの話はそれほど大したものではなかった。
 彼が由美子をダイアナに誘い、彼女が二人だけではなく僕たち三人と、彼女も学生時代の友人を連れてという条件付で、応じてくれたのだという。確かに誘って来てくれると言う状況は嬉しいのだろうが、それでも二人きりで会ってくれないと言う所に、僕とMickyは、それほど喜ぶ事だろうかと感じた。その点をRichardに話すと、彼はまずは皆であって、そのうち二人で会えるようになれるよう、段階を踏むのだなどと、もっともらしい事を言っている。だが、最近好きになった相手ならともかく、もうかれこれ四、五年近くも経つ相手であり、しかも二回振られているというオマケ付である。そういう段階は、とうに過ぎているような気がする。Mickyも僕と同じ意見のようで、もういい加減諦めたらどうだと、諭すような口調で言った。
 Richardは冷水をかけられたようで、面白く無いという顔をしている。Mickyの提言を受け入れる気など、さらさら無いといった顔だ。


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