03.10.19:21
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09.09.23:35
小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その5
疲れきった僕たちに、店を選んでいる余裕はない。入った店は、週末の割には、あまり人影の少ない寂れた店だった。こればかりはさわやかな音を響かせるドアベルの音を聞きながら中に入り、奥のテーブルの座ると軋みそうな古ぼけた椅子に腰掛けると、”ビッグファットママ”という表現がぴったりの恰幅のいいご婦人が、メニューと水の入ったグラスを片手にやってきた。僕らはメニューも見ずに、その場ですぐにアイスコーヒーを三つを注文した。
ビッグファットママから注文を聞いて、ご婦人とは対照的な痩せぎすで口ひげを生やした、いかにもというマスターが、コーヒーを立て始める。店内に流れる音楽はジャズだろうか。興味のある音楽以外は、まるで知識のない僕たちにはよくわからないが、総体的に雰囲気は悪くない。どうしてこんなに寂れているのかが不思議なほどだ。
三人そろって運ばれてきたアイスコーヒーを飲みながら、話題は由美子が誰を連れてくるかということだった。最初に口に出したのはMicky。彼は三人の中で唯一の彼女持ちだが、だからと言って他の異性に興味が無い訳ではないらしい。彼の性格からして、それは浮気心とは少し違うのかもしれないが、そればかりは本人以外、知る由も無い。
僕はあまり興味は沸かなかったが、それでも懐かしい顔に合えるかもしれないという思いはある。先述したとおり、由美子はRichardが学生時代から思いを寄せている女性である。それも学校の外で出会った訳ではない。つまり、僕たち三人と彼女は同級生なのである。その彼女が連れてくる友達というのが、学生時代の友人であってもなんら不思議ではない。僕達と会うと言うならなお更だ。別に学生時代を懐かしむほど年を取った訳でもないが、久しぶりに顔を合わすと言うことは、否応無くそう言った感情を抱かせるようだ。
「誰を連れてくるのか、聞いてないのかよ」
僕たちの会話をニヤニヤしながら聞いていたRichardに、Mickyが気づいて、そう訊いた。
「いや」
Richardは愛煙しているラークマイルドを一吸いしながら、そう答えた。だが、その目は聞いていると物語っている。だが、今回は、由美子との電話の件のように焦らしているのではなく、本当に喋る気が無いと、顔に書いてある。もっともその理由はわからないが。
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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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ビッグファットママから注文を聞いて、ご婦人とは対照的な痩せぎすで口ひげを生やした、いかにもというマスターが、コーヒーを立て始める。店内に流れる音楽はジャズだろうか。興味のある音楽以外は、まるで知識のない僕たちにはよくわからないが、総体的に雰囲気は悪くない。どうしてこんなに寂れているのかが不思議なほどだ。
三人そろって運ばれてきたアイスコーヒーを飲みながら、話題は由美子が誰を連れてくるかということだった。最初に口に出したのはMicky。彼は三人の中で唯一の彼女持ちだが、だからと言って他の異性に興味が無い訳ではないらしい。彼の性格からして、それは浮気心とは少し違うのかもしれないが、そればかりは本人以外、知る由も無い。
僕はあまり興味は沸かなかったが、それでも懐かしい顔に合えるかもしれないという思いはある。先述したとおり、由美子はRichardが学生時代から思いを寄せている女性である。それも学校の外で出会った訳ではない。つまり、僕たち三人と彼女は同級生なのである。その彼女が連れてくる友達というのが、学生時代の友人であってもなんら不思議ではない。僕達と会うと言うならなお更だ。別に学生時代を懐かしむほど年を取った訳でもないが、久しぶりに顔を合わすと言うことは、否応無くそう言った感情を抱かせるようだ。
「誰を連れてくるのか、聞いてないのかよ」
僕たちの会話をニヤニヤしながら聞いていたRichardに、Mickyが気づいて、そう訊いた。
「いや」
Richardは愛煙しているラークマイルドを一吸いしながら、そう答えた。だが、その目は聞いていると物語っている。だが、今回は、由美子との電話の件のように焦らしているのではなく、本当に喋る気が無いと、顔に書いてある。もっともその理由はわからないが。
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