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  • 05/16/00:08

09.13.23:30

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その8

 久しぶりに見る直美は、あの頃のままだった。社会人になり、化粧もそれなりにしているのだろうが、薄化粧なのか、いい意味でそれほど代わり映えしていない。彼女は美人タイプか可愛いタイプかといわれれば、可愛い部類に入る。ふっくらとふくよかな容姿で、弾ける様に笑う笑顔が僕は大好きだった。もっとも話し下手な僕は、自分の力で彼女の笑顔を引き出すことは、あまり出来なかったが。
 もう一人は、直美と由美子と同じグループの千恵だ。三人とも、顔を見るのは高校卒業以来だった。みんなで顔を合わせ、久しぶりの再開にありがちな会話が始まる。久しぶりだとか、変わっていないとか、そういった類の話だ。だが、僕の意識は、ほとんど直美に注がれている。もう終わった恋なのだから、意識する必要などないと自分に言い聞かせるのだが、僕の心の根っこでは、そう簡単には割り切れていないようだ。
「なあに、三人そろってその格好は?」
 いつの間にか僕の隣に居た直美が、僕たちの時代錯誤なスタイルを見て、僕に向かってそう言った。あの頃憧れていたあの笑顔が、手を伸ばせば触れられる所にある。彼女の瞳には何の屈託も無い。僕は過去の事が念頭から離れず、これほど心を揺さぶられているというのに、彼女には何の動揺も無いのだろうか。いや、僕が来ることを知っていて、すでに心の準備は出来ていたのだろうか。それとも、僕の告白など、彼女にとって大した事件ではなかったのかもしれない。
「いいだろ?惚れるなよ」
 僕はほとんど精一杯の強がりと、思考回路を総動員して、冗談交じりにそう答えた。直美は可笑しな事言わないでよと言わんばかりに、笑顔で僕の肩を引っ叩いた。彼女に笑顔浮かんだことで、僕の心に余裕が生まれた。僕は今でも直美の事が好きなのだろうか。そんな疑問が頭をもたげて来る。いや、昔好きだった直美を目の前にして、舞い上がっているだけなのだと、自分に言い聞かせる。なぜそう言い聞かせなければならないのかは、自分でもよく分からないが、ともあれそうした。
 ふと、Richardの顔が僕の視界に入る。Richardは意味ありげな笑みを僕に見せている。馬鹿な話だが、僕はこの時になってようやく、Richardが、誰が来るのかを言い出さなかった訳を理解した。と言うことは、直美がここにいるのは、Richardの差し金なのだろうか。だとすれば、自分の事だけでなく、僕の事にまで気を使ってくれた事になる。Richardにしては気が利いている。

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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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