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  • 03/11/02:12

11.16.22:55

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 62回目 

 またその姿勢は、相手に対して絶対的優位を保とうとする、動物的な威嚇を表す仕草は微塵も感じられず、その両足は心に受けた深い傷の為に小刻みに膝を震わせるわけでもなく、確固たる意思を持つ賢者のように、あるいは深く根ざした巨木のように、大地を噛み締めている。
「あなたはもう答えを出してしまったようだが、もう少しだけ僕らの話を聞いてくれないか」
 Mickyの意外な申し出に、僕の心に困惑の小波が少し立ったものの、それは僕の感情のうねりを再び活性化させる要因となったに過ぎない。当面の身の安全が保障された僕は、自分の言葉が導き出す今後の展開など考慮に入れずに、こうなったからには自分の言いたい事も余すことなく吐き出す事を優先させる事に決め、勢いを取り戻した憎悪の炎の暴れるままに、脳裏に浮かんだ最初の言葉を、彼の問いかけに対する答えになりえない言葉を、自信満々に口にした。

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11.15.23:20

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 61回目 

 それは自分の身に何が起こったのか認識できないほど瞬時に人を破壊してしまう爆発物のような怒りを胸に秘めた姿とも、拳の一撃で肉体どころか心にまで大きな傷を負ってしまい、自らの醜態を押し隠すべく現実逃避している姿ともとれた。僕は真実がどちらであるのかを見極めようと、自分からは一言半句も発さずに、脱出不能の肉体の鎖に無抵抗を決め込んでいた。
 ようやく彼の目が僕を捕らえた。その双眸は内に秘めた静かでありながら大きな怒りを秘めていると言う訳でもなく、また抱いた恐怖をもてあまして落ち着き無く瞳が揺らぐと言う事も無く、僕の想像が全て的外れであった事を物語っていた。

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11.13.22:34

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 60回目 

 とたんに僕の中でこれまでとは完全に異質な不安が脳裏をよぎった。
 彼は倒れた時に頭を打ったのだろうか。記憶の糸をたどってみたが、あやふやではっきりとした正否は導き出せない。人間は簡単に死なないが、打ち所やちょっとした力の掛かる方向などで、意外な事が致命傷になると、何かで聞いた事がある。僕の中で、先程とは比べ物にならない不安と恐慌が襲い掛かり、明らかに力不足な希望的観測がそれに立ち向かっていた。
「あいたた……」
 咳き込む音と共に、ある種間の抜けたMickyの声が、そんな僕を救った。とは言え、殺人者という最悪のシナリオを脱しただけで、依然窮地は脱していない。
 今後の展開の鍵を握っているであろう手負いの男を、僕が固唾を呑んで見守る中、彼は安否を問うRichardの問いかけに、たぶん大丈夫だという曖昧な返事を返しつつ、落ち着いた緩慢な動きで立ち上がり、痛々しげに胸をさすり、背中や尻を軽く払った。その間、終始視線は僕には向けられず、まるで存在すら無いかのような、また自分が胸に打撲を負った原因が僕にあることすら忘れてしまったかのような素振りだった。

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11.12.23:55

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 59回目 

 振りほどこうと何度か身を捩ってはみるものの、痛みばかりが増すだけでいっこうに振りほどけそうに無い。離せと喚いてみた所で、静かな夜更けの町に虚しく響くだけだった。道路を挟んで最終電車に急ぐ僅かな人々は、明らかに気付かない振りを決め込んで、足早に通り過ぎてゆく。通り過ぎてゆくタクシーも、止まる気配すら見せない。
 僕の中に諦めがはっきりと自覚され、性急に冷静さが脳味噌を満たした時、この先どういう目にあうのかと言う不安と、彼らとて立派な大人であるから、酷い無茶はしないであろうと言う希望的観測と、馬鹿な真似をしたと言う悔恨とが入り乱れ、見る見る血の気が引いていった。
 僕は恐る々々、未だ倒れたまま蹲っているMickyに視線を向けた。随分時間が経過しているように感じられるにもかかわらず、未だ微動だにしない。Richardが先程から頻繁に大丈夫かと声を掛けているが、返事すらない。

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11.11.23:45

小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 58回目 

 だが、僕の拳はRichardの顔面ではなく、Mickyの薄い胸板にめり込み、彼は力なく後ろに倒れた。Richardの姿を求めて視線を巡らせると、彼はMickyとは反対の方向に倒れてはいるものの、すでに起き上がろうという体勢だった。どうやらMickyが彼をかばって突き飛ばしたのだろう。
 人一人殴り飛ばした程度では収まりのつかない僕は、無造作に向き直ると、未だ体勢の整っていないRichard目掛けて、いわゆるサッカーボールキックを見舞った。
 争い事に不慣れな僕が、二人相手に見事に立ち回って見せ、アドレナリンとアルコールがもたらす恍惚感に満たされ、勝利を確信したその瞬間に、形勢は一気に逆転した。
 確かにRichardの腹辺りにめり込んだ僕の右足ではあったが、スレンダーな女性の太股ほどはありそうな彼の腕がしっかりと足を捉えたまま離さず、そのまま一気に後方に押し倒され、後頭部を強かに打ち付けた僕は、無様な悲鳴を上げ、気付いた時には後ろ手に締め上げられていた。

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