03.10.19:28
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11.13.22:34
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 60回目
とたんに僕の中でこれまでとは完全に異質な不安が脳裏をよぎった。
彼は倒れた時に頭を打ったのだろうか。記憶の糸をたどってみたが、あやふやではっきりとした正否は導き出せない。人間は簡単に死なないが、打ち所やちょっとした力の掛かる方向などで、意外な事が致命傷になると、何かで聞いた事がある。僕の中で、先程とは比べ物にならない不安と恐慌が襲い掛かり、明らかに力不足な希望的観測がそれに立ち向かっていた。
「あいたた……」
咳き込む音と共に、ある種間の抜けたMickyの声が、そんな僕を救った。とは言え、殺人者という最悪のシナリオを脱しただけで、依然窮地は脱していない。
今後の展開の鍵を握っているであろう手負いの男を、僕が固唾を呑んで見守る中、彼は安否を問うRichardの問いかけに、たぶん大丈夫だという曖昧な返事を返しつつ、落ち着いた緩慢な動きで立ち上がり、痛々しげに胸をさすり、背中や尻を軽く払った。その間、終始視線は僕には向けられず、まるで存在すら無いかのような、また自分が胸に打撲を負った原因が僕にあることすら忘れてしまったかのような素振りだった。
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この小説はフィクションです。
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彼は倒れた時に頭を打ったのだろうか。記憶の糸をたどってみたが、あやふやではっきりとした正否は導き出せない。人間は簡単に死なないが、打ち所やちょっとした力の掛かる方向などで、意外な事が致命傷になると、何かで聞いた事がある。僕の中で、先程とは比べ物にならない不安と恐慌が襲い掛かり、明らかに力不足な希望的観測がそれに立ち向かっていた。
「あいたた……」
咳き込む音と共に、ある種間の抜けたMickyの声が、そんな僕を救った。とは言え、殺人者という最悪のシナリオを脱しただけで、依然窮地は脱していない。
今後の展開の鍵を握っているであろう手負いの男を、僕が固唾を呑んで見守る中、彼は安否を問うRichardの問いかけに、たぶん大丈夫だという曖昧な返事を返しつつ、落ち着いた緩慢な動きで立ち上がり、痛々しげに胸をさすり、背中や尻を軽く払った。その間、終始視線は僕には向けられず、まるで存在すら無いかのような、また自分が胸に打撲を負った原因が僕にあることすら忘れてしまったかのような素振りだった。
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