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  • 01/29/11:17

07.10.00:04

小説 ~Lover Shakers~その5

 ヘレン・シャピロのハスキーな声とは違うが、女性ボーカルの哀愁漂う歌声が、僕を包み込んでゆく。 そう言えば、長い間、恋愛とはご無沙汰な気がする。
 僕は恋愛に、いや好きになった相手にのめりこむほうだ。そして、その恋が叶わなかった時には、その虚無感に押しつぶされ、しばらくの間、恋愛感情というものが、無意識の内に心の奥底深くに追いやられてしまうらしい。その状態が、いつまで続くのかは、正直僕にもわからない。恋を失ったときには何時でも、『もう誰も好きにならない』と、有りもしないことを呟くのだ。だが、その言葉は間違いなく、僕の本心から出ている言葉だ。一つ恋を失うたびに、『今度こそもう二度と…』と腹の底から涌き上がる悲哀感とともに吐き出すのだ。
 僕の最後の失恋から、もう1年半の歳月が過ぎている。だが、僕の恋愛感情と言うものは、未だ回復の兆しを見せないのか、ときめきと言うものが胸の奥で、軽い痛みと共に現れることは無い。
「灰が落ちるぞ」
 Mickyの声で、我に返った。手元を見ると、長く、やや下に垂れ下がったタバコの灰が、今にも落ちそうだった。灰皿に灰を落とした後、一吸いしてから、僕はタバコの火を消した。ちょうど曲も終わるころだった。
 女性ボーカルの元気なMCの後、彼女が紹介した次の曲は、リトル・エヴァの「ロコモーション」だ。僕らは迷わず立ち上がり、中央に陣取った。
 争いは好まないが、あえて逃げることも無い。譲り渡す恩も義理も、彼らに対してあるわけではない。このフロアはみんなの場所であって、誰のものでもない。良い場所は早い者勝ちであって、だれもその場所をリザーブすることは出来ないのだ。
 マジックトーンズの舌打ちが聞こえてきそうな視線を感じながら、ロコモーションの早く、軽快なステップを踏んでゆく。僕の中で『悲しい片思い』で連想させられた、悲しい恋の思い出は、きれいさっぱり消えていた。
 ロコモーションの基本ステップは、ボクッスステップの変形の一つだ。1で右足を前に出し、2で左足を右足に交差させるところまでは一緒だが、3で右足を右に振り出し、4で戻し、5でもう一度振り出し、6で元に戻し、7で右足を、8で左足を元の位置に戻す。これをハローメリールーとは比べ物にならない速さで行う。ここには記さないが、この後さらに手の動きも加わる為、比較的繰り返しが多いダンスが多い中で、複雑なダンスの一つだ。
 曲はロコモーションの後、ニール・セダカの『おおキャロル』と来て、ラスト2曲はロックンロールナンバーだった。曲はエルヴィス・プレスリーの『ハウンド・ドッグ』、リトル・リチャードの『のっぽのサリー』だ。
 ツイストとは、文字通り体のあちこちをひねって踊る。腰をひねり、足をひねり、ひたすら体を動かし続けるのだ。文字で書くと、非常に単純で、まさに誰にでも踊れるダンスの決定版のようだが、これをかっこよく踊るのが実に難しい。ロックンロールナンバーではジルバを踊っている人以外は、皆がそろってツイストを踊るのだが、酔っ払いのおじさんなどは、ほとんどドリフの『良い湯だな』に近いものがある。ダンスは基本的には楽しければ良いのだから、それで楽しいのならそれで良い。べつに下手糞と言ったり、軽蔑の目を向けたりはしない。だが、僕達はかっこよく踊る事が目的と言ってもいい。そんな僕達がドリフでは困る。今ではある程度自分の中で、納得のいくツイストが踊れているが、まだ満足はしていない。ツイストとは、それほど奥が深いのだ。

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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

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07.08.00:49

小説 ~Lover Shakers~その4

 パーカッションの軽快なリズムが、流れ始め、続いてエレキギターがメロディーを奏で始める。今日最初の曲はリック・ネルソンの”ハロー・メリー・ルー”。僕のお望みどおりのミディアムテンポのポップスナンバーだ。
tenai.jpg 「よし」と、心の中でガッツポーズを作った時には、体の方はもう立ち上がっていた。MickyとRichardも既に立ち上がっている。周囲のテーブル、さらにはカウンター席からも、どうやら同じようにウズウズしていた連中が、ダンスフロアになだれ込んでくる。フロアは人で溢れ返り、入れない客が、通路でステップを踏んでいる。
 この曲の最初は、ポピュラーなボックスステップだ。ボックスステップとは、まず1で右足を前に踏み出し、2で左足を右足に交差させ、3で右足を、4で左足を元にもどす。この繰り返しだ。この店に最初に来た夜は、この簡単なステップを踏むことさえ、思うように行かなかったものだ。
 踊りながら周囲に目をやると、席についていたときには暗く、遠目であった為に気付かなかった常連客たちの顔が見える。僕達の左側、4人でステップをあわせ、開襟シャツとビンテージ物と思われるスラックスを身に纏い、きっちりリーゼントを極めているのが、古株のローラーチームである、マジックトーンズだ。年はおそらく僕達よりも4.5歳上だろうか。僕らが秘かに対抗意識を燃やしているチームでもある。どうやら、向こうも僕達のせいでフロアの真ん中が取れなかったことが悔しいのか、時折目が合う。右側には、いつも一人で来て女性客を物色している、通称(僕達だけだが…以下同じ)エロ親父の姿も見える。その斜め後方には、身なりはぜんぜん普通のかっこで、それでもきっちりとステップを踏む、通称メガネコンビも来ている。この二人も、その風貌からは想像もできないが、基本的にはナンパが目当てのようだ。まともにステップを踏んでいるのは、見える範囲ではあるがそのぐらいで、あとは思い思いにステップを踏んだり、ジルバもどきのようなダンスを熟年カップルが踊っている。
 ステージは通常4曲ほどダンスナンバーが続いた後、2曲スローナンバーが入り、その後再び4曲ほどダンスナンバーが続くというパターンだ。今回も、”ハロー・メリー・ルー”に続いて、エディ・ホッジスの”恋の売り込み”、ベンチャーズの”パイプライン”と続いて、スローナンバーへと移った。曲はプラターズの”煙が目にしみる”。
 僕達は再び席に着いた。僕らにとって、スローナンバーはインターバルのようなものだ。もちろんチークを誘われるような事態が起これば、相手がおばさんであれ付き合うが、自分から誘うようなまねはしない。どうも、そういうのは苦手だ。
 目を閉じて、プラターズの甘いハーモニーに耳を傾けていると、Mickyの声。
「マジックトーンズのやつら、ずっとこっちを見ていたのに気付いたか」
「おう。見てた見てた。癪に障る…」
 受けたのはRichardだ。この3人の中で、一番気が短い。確かにあの4人は悪意のある目でこちらを見ていた。どうも新参者に近い僕らが、フロアの真ん中に陣取っているのが気に入らないらしい。だが、こちらから文句を言うのは、勘弁願いたい。喧嘩になって、店を追い出されたら、楽しい夜が台無しだ。最悪の場合、入店禁止になる事だってある。聞いた話では、通うようになった頃に良く見かけたが、ここ最近見かけない、ちょび髭の、通称まろは、喧嘩が原因で入店禁止になったらしい。そんなことは御免だった。それに、高校生でもあるまいし、目が合っただけで喧嘩を売るというのか。馬鹿馬鹿しい事この上ない。僕は目を閉じたまま、二人の会話を聞き流した。
 二人がなんだかんだと言っているうちに、曲が終わった。女性ボーカルのMCの後、再び曲に移った。2曲目のスローナンバーはヘレン・シャピロの”悲しき片思い”。僕は吸い始めたころから愛煙しているPALL MALLにジッポーの火を近づけた。


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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

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07.06.22:36

My Favarite 車編

 実を言えば、今はなんでもない国産車に乗っている。Oldiesとも、Rock’n Rollともまったく関係の無い、ごく普通の国産車だ。
 趣味と現実とは、大きな溝がある。こうして家庭を持つようになればなおさらだ。
 それでも過去には、小説にも登場させた、フォルクスワーゲンタイプ2に乗っていた時期があった。67年型、full-043s.jpg写真の型の最終年式である。この年に、タイプ2は大きくモデルチェンジしている。
 この車が、Rock’n Rollしているかと、冷静に聞かれれば、していないかもしれない。Rock’n Rollという言葉から連想される車と言えば、シボレーベルエアや、シェビー、またはアメリカングラフィティでおなじみの、ホットロッド仕様のT型フォードなどではないだろうか。
 だが自分は、この車が心底気に入っている。FLAT-4という愛称で親しまれる、水平対抗4気筒エンジンの、ドコドコという独特の排気音。まるでバスのような、大口径のステアリング。近年では、軽自動車によるディフォルメまで作成されるほど、個性的なデザイン。
 正直に言えば、また機会があれば(いや、お金があればの間違いか…)乗ってみたいと思っている。

 ちなみに、Mickyはその昔、いすゞのヒルマンミンクスという国産旧車に20031025hilman_03.jpg乗っており、その後ボルボアマゾンをへて、現在は某高級外車に乗っている。Richardは、現実主義者なのか、めんどくさがり屋なのか、旧車というものには手を出さず、ずっと国産車にのっている。

07.04.00:06

小説 ~Lover Shakers~その3

 店に入ると、ウェイターのいらっしゃいませの声と共に、ジョニーソマーズの包み込むような優しさの溢れる歌声が僕達を迎えてくれる。曲はもちろん彼女の代表曲である『ワン・ボーイ』だ。僕のお気に入りの曲でもあり、楽しい夜を、約束してくれているかのようだ。
 ウェイターの案内で、僕らはステージ前の席に案内された。この場所は、踊るにはもってこいの場所だが、店が空いている場合は案内されることはまず無い。余りにステージが近すぎ、しかもステージが始まるとフロアに踊る人達が溢れ出し、踊らない人にとっては余り好ましく無い場所だからだ。つまり、今日はほぼ満員御礼と言うことだ。 金曜の夜と言うこともあるのだろう。お店としては万々歳なのだろうが、あまり人が多いのも、僕らとしては嬉しくは無い。もちろん閑古鳥が鳴いていると言うのはもっと困るが、普段はおとなしく飲んでいるだけの酔っ払いも踊りだし、フロアがすし詰め状態になり、好きに踊ることができないからだ。
 ふと店内を見回して見る。この店の年齢層は、演奏されるのがオールディーズと言うこともあって、それなりに高い。20代、30台よりも、だんぜん40代、50代という感じの人が多い。それに、年齢層が高いという理由には、ただ酒を飲むだけが目的であれば、値段も高いと感じる所為かもしれない。僕らが40代、50代になる頃には、こういう店は無くなってしまうのではないだろうかという不安が、ふと頭をよぎる。だが、そんな考えはすぐに放念した。そんな事は、今はどうでも良い。
 いつの間にかウィスキーのボトルやらグラスが用意され、ウェイターが水割りを作ってくれている。僕らがいつも口にしているのは、カナディアンクラブやジャックダニエルと言った、いわゆる安物である。いくら踊りで渇いたのどを潤すのが主な目的ではあっても、本当を言えば高いブランデーなども飲んでみたいのだが、僕らの懐事情では、とても手が出ない。今のように、毎週のように来ていればなおさらだ。
 ウェイターに一通りオーダーを済ますと、僕らは乾杯の掛け声と共に、グラスを合わせた。時刻は7時50分。この日僕らにとっての最初のステージは、8時からだ。もうすでに体はうずうずしている。Mickyは落ち着いた様子で、今月何度も目にしているはずの、メニューを兼ねた、店の小冊子に目をやっている。Richardは、辺りを見回し、数少ない若い女性客を物色している様子だ。
 そうこうしている内に、一人、また一人と、おなじみのバンドメンバーがステージにやってきて、音合わせを始めた。僕はもう、椅子を少し引いて、いつでも飛び出せる体勢に入る。最初の曲は、何だろう。僕としては、体をほぐす意味でも、ミディアムテンポのポップスナンバーが良い。いきなりRock’n Rollでも構わない。一番願い下げなのは、たまにあるスローナンバーからのスタートだ。この店では、客がリクエスト出来る様になっており、たまにリクエストが出たスローナンバーを、一発目に演奏することがあるのだ。
 しばらくすると、店内の薄暗い照明がすっと消された。BGMもそれと共に、フェードアウトしてゆく。いよいよステージの始まりだ。僕は少し腰を浮かせた。

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06.30.23:26

小説 ~Lover Shakers~その2

 高速は、まるでのろまな現実を象徴するかのように、遅々として進まない。
 ミッション車の、特に旧車のクラッチは重く、渋滞はさすがに堪える。だけど、いかにも乗せてもらっていますと言った、現在の電子制御で固められた車は、どうも好きになれない。どんなにうるさくても、クーラーが無くても、恒久的に染み出しているオイルの匂いが鼻についても、いや、だからこそ旧車が好きなのかもしれない。判で押したような、どれも代わり映えのしないデザインも気に食わない。新車と謳って登場するどれもが、僕にとってはどこかで見たことのある車に見えてしょうがないのだ。その点、この車は違う。だれがどう見たところで、他の車と間違えることは無い。いや、間違いようが無いといったほうが正しい。たとえその人が、フォルクスワーゲンタイプ2という名前を知らなくても、違う車の名前を口にすることはまず無い。それが、この車を選んだ最大の理由だ。
 そんな僕のどうでも良い思考をよそに、カーステレオの中では、エルヴィスがお目当ての彼女を口説き、チャックベリーがベートーベンをぶっ飛ばし、コニーフランシスがヴァカンスを楽しんでいる。その歌声が、リズムが、苛立ちに身を委ねてしまいそうな僕を、FUNな世界に引き込んでくれる。

 約1時間半かけて、集合場所であるいつもの1日1500円の駐車場に着くと、めずらしく、MickyもRichardも来ている。集合時間の10分過ぎにも関わらずだ。彼らは僕の学生時代からの親友だが、集合時間を過ぎても現れないことなどしばしばだ。Richardに限っては、いつまでたっても現れず、挙句の果てには「やっぱり行くのやめた」と言う事まである始末だ。僕が珍しくと思ったのはそのためだ。
 Richardは勝ち誇ったかのように、遅いじゃないかと、僕の尻に蹴りを入れてくる。僕も、お前に言われたくは無いと、お返しに蹴りをくれてやる。Mickyは、説教くさい口調で、集合時間を守れと言っている。それに対して僕は、脇腹に一つ突きをかましてやる。
 僕達のある種子供じみた挨拶が終わると、茜色から紫へと移り変わってゆく空の下を、3人並んで店のほうへと歩き出す。
 3人とも揃って、時代錯誤とも言えるリーゼントをしてる。Mickyは古着屋で買ったお気に入りのジャケットの下に、白の開襟シャツを着て、同じくビンテージ物のスラックスを履いている。靴もビンテージ物で色は黒、先は尖っていて、底は滑りやすいように鋲が仕込んであるという優れものだ。メンバー中、彼の服装が一番金がかかっている。Richardは紺の開襟シャツに、下はジーンズ。靴は尖がってはいるが、実は裏はゴム底だ。メンバー中、彼のリーゼントが最もやる気が無い。もっとも本人は、上手くまとまらないのは髪質の所為だと言っている。
 そんな希少生物のような3人が歩けば、目立たない訳が無い。あからさまに『何だあれは?』という視線を投げかけてくる人もいる。正直なところ、店ではともかく、外でこの格好は未だに慣れず、正直羞恥心を覚える。言うなれば、一昔前のアイドルが、ど派手なステージ衣装のまま町を歩くようなものだ。だが、店までの我慢だ。
 店に着くころには、いつの間にか、夕闇が低く垂れ込めてきている。その闇の中で、”Live House DIANA”というネオンサインがひときわ魅力的に輝いている。
 いよいよ夜が始まる。僕達のショータイムが始まるのだ。

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