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  • 05/15/15:11

07.10.00:04

小説 ~Lover Shakers~その5

 ヘレン・シャピロのハスキーな声とは違うが、女性ボーカルの哀愁漂う歌声が、僕を包み込んでゆく。 そう言えば、長い間、恋愛とはご無沙汰な気がする。
 僕は恋愛に、いや好きになった相手にのめりこむほうだ。そして、その恋が叶わなかった時には、その虚無感に押しつぶされ、しばらくの間、恋愛感情というものが、無意識の内に心の奥底深くに追いやられてしまうらしい。その状態が、いつまで続くのかは、正直僕にもわからない。恋を失ったときには何時でも、『もう誰も好きにならない』と、有りもしないことを呟くのだ。だが、その言葉は間違いなく、僕の本心から出ている言葉だ。一つ恋を失うたびに、『今度こそもう二度と…』と腹の底から涌き上がる悲哀感とともに吐き出すのだ。
 僕の最後の失恋から、もう1年半の歳月が過ぎている。だが、僕の恋愛感情と言うものは、未だ回復の兆しを見せないのか、ときめきと言うものが胸の奥で、軽い痛みと共に現れることは無い。
「灰が落ちるぞ」
 Mickyの声で、我に返った。手元を見ると、長く、やや下に垂れ下がったタバコの灰が、今にも落ちそうだった。灰皿に灰を落とした後、一吸いしてから、僕はタバコの火を消した。ちょうど曲も終わるころだった。
 女性ボーカルの元気なMCの後、彼女が紹介した次の曲は、リトル・エヴァの「ロコモーション」だ。僕らは迷わず立ち上がり、中央に陣取った。
 争いは好まないが、あえて逃げることも無い。譲り渡す恩も義理も、彼らに対してあるわけではない。このフロアはみんなの場所であって、誰のものでもない。良い場所は早い者勝ちであって、だれもその場所をリザーブすることは出来ないのだ。
 マジックトーンズの舌打ちが聞こえてきそうな視線を感じながら、ロコモーションの早く、軽快なステップを踏んでゆく。僕の中で『悲しい片思い』で連想させられた、悲しい恋の思い出は、きれいさっぱり消えていた。
 ロコモーションの基本ステップは、ボクッスステップの変形の一つだ。1で右足を前に出し、2で左足を右足に交差させるところまでは一緒だが、3で右足を右に振り出し、4で戻し、5でもう一度振り出し、6で元に戻し、7で右足を、8で左足を元の位置に戻す。これをハローメリールーとは比べ物にならない速さで行う。ここには記さないが、この後さらに手の動きも加わる為、比較的繰り返しが多いダンスが多い中で、複雑なダンスの一つだ。
 曲はロコモーションの後、ニール・セダカの『おおキャロル』と来て、ラスト2曲はロックンロールナンバーだった。曲はエルヴィス・プレスリーの『ハウンド・ドッグ』、リトル・リチャードの『のっぽのサリー』だ。
 ツイストとは、文字通り体のあちこちをひねって踊る。腰をひねり、足をひねり、ひたすら体を動かし続けるのだ。文字で書くと、非常に単純で、まさに誰にでも踊れるダンスの決定版のようだが、これをかっこよく踊るのが実に難しい。ロックンロールナンバーではジルバを踊っている人以外は、皆がそろってツイストを踊るのだが、酔っ払いのおじさんなどは、ほとんどドリフの『良い湯だな』に近いものがある。ダンスは基本的には楽しければ良いのだから、それで楽しいのならそれで良い。べつに下手糞と言ったり、軽蔑の目を向けたりはしない。だが、僕達はかっこよく踊る事が目的と言ってもいい。そんな僕達がドリフでは困る。今ではある程度自分の中で、納得のいくツイストが踊れているが、まだ満足はしていない。ツイストとは、それほど奥が深いのだ。

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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

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