07.21.23:04
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10.11.23:05
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 41回目
それでもMickyの話は続く。どこまでも。
「僕達が住むこの空間はそんな場所だ。時代は回ると言うからいつかまたいい時代がやってくるかもしれない。でもそれはいつかは分からない。すぐそこまで来ているのかもしれないし、僕達が死んだ後なのかもしれない。でも少なくとも僕やRichardにとってはそんな事は関係ない。時代に流されるなら、とっくの昔に流されている。でも、そんな事関係なく、この場所とダンスが好きだから、僕達はここに居るんだ」
僕は彼の言葉を遮るように、大きく咳払いをした。次いでゆっくりとマルボロを取り出し火をつけた。
「その話と、僕と何か関係が有るんですか?」
僕の言葉には、あからさまな棘があった。彼のいつ果てるとも付かない演説に嫌気が差していたからだ。彼らは最後の希望の光と思っていたけれど、とんだ見込み違いだった。この時の僕は、そう思い込んでいたのだ。だからその火が消えてしまおうとも構わないと本気で思っていた。
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「僕達が住むこの空間はそんな場所だ。時代は回ると言うからいつかまたいい時代がやってくるかもしれない。でもそれはいつかは分からない。すぐそこまで来ているのかもしれないし、僕達が死んだ後なのかもしれない。でも少なくとも僕やRichardにとってはそんな事は関係ない。時代に流されるなら、とっくの昔に流されている。でも、そんな事関係なく、この場所とダンスが好きだから、僕達はここに居るんだ」
僕は彼の言葉を遮るように、大きく咳払いをした。次いでゆっくりとマルボロを取り出し火をつけた。
「その話と、僕と何か関係が有るんですか?」
僕の言葉には、あからさまな棘があった。彼のいつ果てるとも付かない演説に嫌気が差していたからだ。彼らは最後の希望の光と思っていたけれど、とんだ見込み違いだった。この時の僕は、そう思い込んでいたのだ。だからその火が消えてしまおうとも構わないと本気で思っていた。
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10.09.23:15
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 40回目
「インターネットが普及した頃、ダイアナを初めとしたオールディーズライブハウスを扱ったホームページが沢山有ったけれど、今ではまともに更新しているサイトはごく僅かだ。この店には若い客はほとんど居ない。語り継がれるべき若い世代の血が入っていないんだ。そう。僕達を楽しませてくれていたオールディーズはもはや死に至る病に侵されつつある」
間違い無く話が横道に逸れてしまっている。彼の話が分からない訳では無いが、今は僕が踊れなくなってしまったと言う事が本題のはずだ。僕はこのいつ終わるとも分からない話に、苛立ちを覚え始めていた。
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10.08.23:46
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 39回目
「でも、僕達をストレンジャーにしているのは、その人だったり、今の時代の価値観であって、けして僕達が間違っていると言う事に直結しているわけじゃない。ダンスにしたってそうだろ。僕達の少し前の世代じゃディスコが流行っていて、少なくともダンスは一般の人達にとって身近な物だった。でも今ではそんなものは時代の波に流されてしまって跡形も無い。ダンスは職業としてか、どこかの会場で開かれる大会の為に必死になって複雑なステップを覚えなくちゃならないようなものだけが日の光を浴びている。日本人は元来人前で踊ると言う事に免疫を持っていないのも一つの原因なんだろうけど、ともかく誰もが気軽に踊れる場所は随分少なくなって、アングラな存在になってしまった」
そこまで喋って、Mickyは再びグラスを煽り、タバコに火をつけた。
それにしても彼は良く喋るし、何だか話も少し横道にそれている気さえする。僕は煙に巻かれないように、今まで以上に真剣に、彼の言葉を待った。
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そこまで喋って、Mickyは再びグラスを煽り、タバコに火をつけた。
それにしても彼は良く喋るし、何だか話も少し横道にそれている気さえする。僕は煙に巻かれないように、今まで以上に真剣に、彼の言葉を待った。
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10.07.23:16
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 38回目
最初に口を開いたのはRichardだった。彼は大きく煙を吐き出すと、短くなったタバコをもみ消し、僕の目をじっと見詰めた。
「そんなに気にする程の事じゃないぜ。笑いたい奴には笑わせとけよ」
彼らしいと言えば、それまでの言葉だった。気にせずにいられるなら、とっくの昔にダンスフロアに戻っている。それが出来ないから悩んでいるのでは無いか。
僕の怪訝な表情に気付いたのか、Mickyが苦笑を浮かべた。
「コイツの言い方は悪いけど、一理有ると思いますよ。確かに人のすることに難癖をつけるのは良いことじゃない。でも今の時代、こういう店に通い詰めている事だけで、僕達は十分ストレンジャーだと思う。こんな格好をしている僕等はなおさらね。人と違う事をしていれば、時には指差されたり、笑われたりする事もあるかもしれない」
Mickyは言葉を切ると、指の間で残り数ミリになったタバコを一吸いしてから、灰皿に押し付けた。僕の反応を確かめるかのように、目は僕の相貌を捕らえたままだった。 僕はと言うと、彼らが人に笑われる姿がどうしても想像できず、あまり現実味の無い話として捉えていた。
Mickyは水割りを少し口に含んだ後、言葉を繋いだ。
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「そんなに気にする程の事じゃないぜ。笑いたい奴には笑わせとけよ」
彼らしいと言えば、それまでの言葉だった。気にせずにいられるなら、とっくの昔にダンスフロアに戻っている。それが出来ないから悩んでいるのでは無いか。
僕の怪訝な表情に気付いたのか、Mickyが苦笑を浮かべた。
「コイツの言い方は悪いけど、一理有ると思いますよ。確かに人のすることに難癖をつけるのは良いことじゃない。でも今の時代、こういう店に通い詰めている事だけで、僕達は十分ストレンジャーだと思う。こんな格好をしている僕等はなおさらね。人と違う事をしていれば、時には指差されたり、笑われたりする事もあるかもしれない」
Mickyは言葉を切ると、指の間で残り数ミリになったタバコを一吸いしてから、灰皿に押し付けた。僕の反応を確かめるかのように、目は僕の相貌を捕らえたままだった。 僕はと言うと、彼らが人に笑われる姿がどうしても想像できず、あまり現実味の無い話として捉えていた。
Mickyは水割りを少し口に含んだ後、言葉を繋いだ。
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10.06.22:46
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 37回目
それからも、僕はダンスフロアに立ったが、その度に誰かが僕のことを笑い、嘲るのだ。その度に体が震え、心が萎えて、1曲も踊らないうちにトイレへと逃げ込む。
そのうち僕は、踊ることを諦めてしまったのだ。
「その後は見ての通りです。踊れなくなっても、こうしてこの場所にしがみついています」
僕は自嘲的な笑みを浮かべながら、最後にそう締めくくった。僕は喋りすぎて乾いた喉に、ミネラルを流し込みながら、彼らの反応を待っていた。
しばしの静寂が流れる。BGMはプラターズの♪オンリー・ユー♪。この場には場違いな甘いハーモニーが店内を優しく包み込んでいる。
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