03.12.20:27
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09.30.23:18
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 34回目
とてもドアを開けられる状態では無い僕は、その場にいつまでも立ち尽くしている訳にもいかず、止む無く個室に引き篭もった。用も無いのに便器に腰掛けた僕は、ずっと応えの無い自問自答を繰返していた。自分のダンスの完成度。その他大勢の人間と比べて、いけない所は無かったか。ふらついたり、躓いたりした事は無かったか。そんな事を考えながらステージを振り返ることなど初めてだったが、そうしていなければ落ち着かないのだ。
そうやって半ば強引に僕が導き出した答えは、軽蔑されていたのは僕では無いという、それこそ自意識過剰に満ち溢れたものだった。
僕には何の落ち度も無い。
軽蔑され、嘲笑を買うような如何様な行為も行ってはいない。
僕はほとんど自分に言い聞かせるようにして、トイレを後にした。そうやって自信を取り戻した僕だったが、あの若者グループの席の前では、自然と早足になり、顔を背けて通り過ぎていた。
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そうやって半ば強引に僕が導き出した答えは、軽蔑されていたのは僕では無いという、それこそ自意識過剰に満ち溢れたものだった。
僕には何の落ち度も無い。
軽蔑され、嘲笑を買うような如何様な行為も行ってはいない。
僕はほとんど自分に言い聞かせるようにして、トイレを後にした。そうやって自信を取り戻した僕だったが、あの若者グループの席の前では、自然と早足になり、顔を背けて通り過ぎていた。
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09.29.23:31
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 33回目
「特にほら、真ん中で踊ってた奴」
「あ~。すごかったよな。自意識過剰ってやつ?」
「そうそう」
ノブを持つ手が震え、耐え切れなくなった僕は、思わず後退りしていた。『真ん中』と言う言葉だけで特定できる人間と言えば、明らかに他とは異なるステップを踏んでいた僕以外考えられなかった。
彼らの話題の中心に僕が居たなんて、思いもしなかった事だった。てっきり、僕を除くその他大勢、つまりは”酔っ払いの親父ダンサーズ”に向けられたものとばかり思っていたからだ。
まさに自意識過剰。返す言葉さえ思い浮かばない。気が付けば、さっき洗い流したばかりの額に、先程までとは異なる汗が浮いている。膝は小刻みに震え、立っているにもかかわらず、まるで貧乏揺すりをしているかのようだ。
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「あ~。すごかったよな。自意識過剰ってやつ?」
「そうそう」
ノブを持つ手が震え、耐え切れなくなった僕は、思わず後退りしていた。『真ん中』と言う言葉だけで特定できる人間と言えば、明らかに他とは異なるステップを踏んでいた僕以外考えられなかった。
彼らの話題の中心に僕が居たなんて、思いもしなかった事だった。てっきり、僕を除くその他大勢、つまりは”酔っ払いの親父ダンサーズ”に向けられたものとばかり思っていたからだ。
まさに自意識過剰。返す言葉さえ思い浮かばない。気が付けば、さっき洗い流したばかりの額に、先程までとは異なる汗が浮いている。膝は小刻みに震え、立っているにもかかわらず、まるで貧乏揺すりをしているかのようだ。
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09.27.22:28
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 32回目
そのままトイレへと向かい、流れる汗を洗い流し、ドアを開けようとした時だった。扉のすぐ向こうの笑い声が僕の耳に飛び込んできた。その声は明らかに蔑みと嘲りに満ちていた。僕は思わず、ドアの側で耳をそばだてていた。
声の主は女性が二人に男性が一人。声の感じからして、あの若い集団だろうか。会話の内容は、踊っている人間に対する軽蔑だった。
恥ずかしげも無く。いい年をして。自分に陶酔している。云々。はっきりとは聞き取れないが、凡そそんな内容だった。その合間に忌々しく、憎悪すら覚える嘲笑が入るのだ。誰であろうと、人の楽しみを軽蔑したり非難する事は許されることでは無い。たとえその対象が、酔っ払いの親父ダンサーズであってもだ。
僕が熱いものを胸にもう一度ドアを開けようとしたその時、僕を愕然とさせる言葉が脳天に響いた。
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声の主は女性が二人に男性が一人。声の感じからして、あの若い集団だろうか。会話の内容は、踊っている人間に対する軽蔑だった。
恥ずかしげも無く。いい年をして。自分に陶酔している。云々。はっきりとは聞き取れないが、凡そそんな内容だった。その合間に忌々しく、憎悪すら覚える嘲笑が入るのだ。誰であろうと、人の楽しみを軽蔑したり非難する事は許されることでは無い。たとえその対象が、酔っ払いの親父ダンサーズであってもだ。
僕が熱いものを胸にもう一度ドアを開けようとしたその時、僕を愕然とさせる言葉が脳天に響いた。
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09.26.23:58
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 31回目
その日も、僕にとっては変わらぬ夜になるはずだった。ダイアナに至る扉を開け、カウンターに腰掛けながら、グラスとマルボロを片手に綺羅星のようなナンバー達に耳を傾け、ステージが始まれば、体ごとリズムに身を委ねる。僕にとってはありふれた日常のような時が穏やかに流れるはずだった。
それは僕にとっての最初のステージが終わった後に起こった。
その日は、平日にしては良く客の入っていた日で、ステージ前の丸テーブル以外はほとんどの座席に大小のグループが笑顔を見せている。大学生のサークルか、新入社員の親睦会(?)のような若い客の姿も見える。
その所為かは知らないが、いつものどちらかと言えば聴かせる選曲のステージ構成ではなく、週末を思わせるような踊れるナンバーが数多く演奏された。今となってはさすがに曲名までは覚えていないが、最後にエディ・コクランの♪サマータイム・ブルース♪が流れた事だけは鮮明に覚えている。勿論僕はダンスフロアの中央に陣取って踊り、最高の気分でダンスフロアを後にした。
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それは僕にとっての最初のステージが終わった後に起こった。
その日は、平日にしては良く客の入っていた日で、ステージ前の丸テーブル以外はほとんどの座席に大小のグループが笑顔を見せている。大学生のサークルか、新入社員の親睦会(?)のような若い客の姿も見える。
その所為かは知らないが、いつものどちらかと言えば聴かせる選曲のステージ構成ではなく、週末を思わせるような踊れるナンバーが数多く演奏された。今となってはさすがに曲名までは覚えていないが、最後にエディ・コクランの♪サマータイム・ブルース♪が流れた事だけは鮮明に覚えている。勿論僕はダンスフロアの中央に陣取って踊り、最高の気分でダンスフロアを後にした。
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09.25.22:28
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 30回目
最後の仲間を失った後も、僕は変わらずダイアナに通い続けた。変わらずと言うよりも、仲間と通っていた頃と比べて、予定を合わせる必要も無かった為か、通う頻度は増えていったと言う方が正しい。多い時は週に2・3回。それまで行く事の無かった平日にまで、顔を出すようになっていた。今にして思えば、その動機の一部には、楽しみを放棄した仲間達に対する、ある種あてつけの様な感情が働いていたのかもしれない。
お前達がいなくても、俺はこんなに楽しんでいるぞ―と。
それでも僕は、実際あの日を迎えるまでは、存分にダイアナという世界を楽しんでいた。カウンターから見下ろす新しい眺望を知る事ができたし、何人かの古い常連客との一期一会も新鮮だった。仲間だけで通っていた頃には気付かなかった新たな魅力が、そこかしこに隠れていたのだ。
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お前達がいなくても、俺はこんなに楽しんでいるぞ―と。
それでも僕は、実際あの日を迎えるまでは、存分にダイアナという世界を楽しんでいた。カウンターから見下ろす新しい眺望を知る事ができたし、何人かの古い常連客との一期一会も新鮮だった。仲間だけで通っていた頃には気付かなかった新たな魅力が、そこかしこに隠れていたのだ。
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