03.10.20:46
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07.14.23:23
小説 ~Lover Shakers~その9
「女にもてるほどではないようだがな」
ハコフグの言葉に、マジックトーンズのメンバー全員が、大声で笑った。Richardが、四人組に振られたことを言っているのは明白だった。
僕ははっとなってRichardを見ると、Richardはすでに怒りをあらわに、既に一歩を踏み出そうかという状態である。僕は、慌てて彼のシャツの裾を引っ張った。ものすごい形相そのままに、Richardが僕を見る。
「出入り禁止になるぞ」
僕は小声で、さらに制した。
Richardは不承不承ながら、納得したようだった。
「僕達は面食いなんですよ」
Mickyが何食わぬ顔で、そう返した。失礼ながら、確かに彼らの横にいる女性は、見せびらかして自慢するほど、顔やスタイルが良いとは、お世辞にもいえない。僕は思わず吹き出しそうになるのを、懸命にこらえた。Richardも、Mickyの言葉に、いくらか怒りを抑えたことだろう。
逆に神経を逆なでされた、一番端に座っている痩せぎすのカマキリを想像させる男が、腰を浮かしかけたのを、ハコフグが制した。どうやら、ハコフグがこのチームのリーダー格らしい。
「なかなか肝が据わっているじゃないか。悪くないぜ」
「そんなに褒めてもらっても、何も奢りませんよ」
ハコフグの言葉に、すかさずMickyが返す。ハコフグは呆れた様な笑みを口元に浮かべた。
「どうだ。俺達のチームに入らないか。踊りも教えてやるし、女にも不自由しないぜ」
どうやら、彼らは僕らを懐柔し、自分たちの懐に納めるのが狙いらしい。考えても見なかった展開だ。だが、僕の答えは決まっている。こんないけ好かない連中とつるむ気も無ければ、傘下に納まる気も無い。Mickyも恐らく同じ気持ちだろう。Richardは馬鹿にされた分、なおさらだろう。
僕らは、視線を合わせただけで、お互いの気持ちを認識しあった。
Mickyが、向き直る。
「いえ。僕らは僕らだけでやっていきます。では」
そういい終わった後には、もう身を翻している。これ以上話す事は何も無いと、態度で表しているのだ。Richardもそれに習って、すでに体を翻している。僕は軽く頭を下げて、立ち去ろうとしたその時、ハコフグの声が飛んできた。
「おい。お前だけでもどうだ。三人の中じゃ、一番センスあると思うぜ。下手糞と踊ってたって、上手くならないだろう」
再び嘲笑が涌き上がる。
僕は、仲間を馬鹿にされた怒りを抑えることに必死で、しばらく言葉が出なかった。深く息を吸い込むと、再びハコフグの目を見た。立ち去りかけた二人も、立ち止まって僕の後ろにいるのがわかる。
「楽しく踊れないと意味が無いんで。それに二人は下手じゃありませんよ」
僕は、精一杯感情を抑えてそう言うと、彼らに背を向けた。
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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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ハコフグの言葉に、マジックトーンズのメンバー全員が、大声で笑った。Richardが、四人組に振られたことを言っているのは明白だった。
僕ははっとなってRichardを見ると、Richardはすでに怒りをあらわに、既に一歩を踏み出そうかという状態である。僕は、慌てて彼のシャツの裾を引っ張った。ものすごい形相そのままに、Richardが僕を見る。
「出入り禁止になるぞ」
僕は小声で、さらに制した。
Richardは不承不承ながら、納得したようだった。
「僕達は面食いなんですよ」
Mickyが何食わぬ顔で、そう返した。失礼ながら、確かに彼らの横にいる女性は、見せびらかして自慢するほど、顔やスタイルが良いとは、お世辞にもいえない。僕は思わず吹き出しそうになるのを、懸命にこらえた。Richardも、Mickyの言葉に、いくらか怒りを抑えたことだろう。
逆に神経を逆なでされた、一番端に座っている痩せぎすのカマキリを想像させる男が、腰を浮かしかけたのを、ハコフグが制した。どうやら、ハコフグがこのチームのリーダー格らしい。
「なかなか肝が据わっているじゃないか。悪くないぜ」
「そんなに褒めてもらっても、何も奢りませんよ」
ハコフグの言葉に、すかさずMickyが返す。ハコフグは呆れた様な笑みを口元に浮かべた。
「どうだ。俺達のチームに入らないか。踊りも教えてやるし、女にも不自由しないぜ」
どうやら、彼らは僕らを懐柔し、自分たちの懐に納めるのが狙いらしい。考えても見なかった展開だ。だが、僕の答えは決まっている。こんないけ好かない連中とつるむ気も無ければ、傘下に納まる気も無い。Mickyも恐らく同じ気持ちだろう。Richardは馬鹿にされた分、なおさらだろう。
僕らは、視線を合わせただけで、お互いの気持ちを認識しあった。
Mickyが、向き直る。
「いえ。僕らは僕らだけでやっていきます。では」
そういい終わった後には、もう身を翻している。これ以上話す事は何も無いと、態度で表しているのだ。Richardもそれに習って、すでに体を翻している。僕は軽く頭を下げて、立ち去ろうとしたその時、ハコフグの声が飛んできた。
「おい。お前だけでもどうだ。三人の中じゃ、一番センスあると思うぜ。下手糞と踊ってたって、上手くならないだろう」
再び嘲笑が涌き上がる。
僕は、仲間を馬鹿にされた怒りを抑えることに必死で、しばらく言葉が出なかった。深く息を吸い込むと、再びハコフグの目を見た。立ち去りかけた二人も、立ち止まって僕の後ろにいるのがわかる。
「楽しく踊れないと意味が無いんで。それに二人は下手じゃありませんよ」
僕は、精一杯感情を抑えてそう言うと、彼らに背を向けた。
*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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