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  • 05/16/01:14

11.21.00:00

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その25

 僕達の夜は終わった。
 まだダイアナの閉店時間までは、二時間近くあったが、とても残る気にはなれなかった。由美子達を送り出した僕達は、しばらく押し黙ったまま、席に着いていたが、Mickyの「帰ろうか」と言う言葉にはじかれる様にして、店を出たのだった。

 店の外は、早くも冬の到来を予感させる、肌を刺すような風が吹き荒れている。その中を、終電を目指す人々が、自らの人生を表現しているかのように、足早に通り過ぎてゆく。少し離れたところでは、酔いつぶれた中年男性が、人生の終焉を迎えたかのように、座り込んでいる。時折耳に入ってくるのは、苛立ちにまみれた車のクラクションと、自分の将来を悲観する者たちが上げる、悲鳴にも似た高笑いばかりだ。
 どれもこれもが、今夜の僕達の心情を映し出しているかのようで、何も言葉が出ない。いつもと同じ道にもかかわらず、どこか見知らぬ間道へと迷い込んでしまったかのようだった。
 僕もMickyも、Richardに何も聞かないし、何も言わない。Richardの告白の結末は、その後の彼の態度と、最後まで涙を見せていた由美子の姿が、全てを物語っている。そんなRichardに掛ける言葉などないし、それ以上知りたいとも思わない。
「良かったじゃないか。直美と上手くいったんだろ?感謝しろよ」
 Richardが、あのチークダンス以来、初めて口にした言葉が、それだった。正直、Richardには感謝しているし、別れ際に、直美から「また連絡するね」という言葉をもらった以上、確かに上手くいっていた。だが、僕にとって、彼女と過ごした時間は遠い過去の出来事のようで、今は正直それほど嬉しくはない。その為、僕の返事は、トーンの低いものになった。
「あぁ。ありがとう」
「なんだよ。俺の事なら気にせず、素直に喜んでいいんだぜ」
「ほら、よく言うじゃないか。『終わり良ければ全て良し』って。つまり、終わり悪けりゃ、全て駄目ってことさ」
「悪かったな。振られて……」
 Richardの言葉から初めて、告白の失敗が語られた事に、僕は少し動揺した。故意に、その方向に話を持って行った訳ではなかったからだ。
「そう言う意味じゃないよ。ただ、本当に嬉しい事は嬉しいんだけど……。ごめん。上手く言えない」
 再び僕達に、沈黙の時間が訪れた。



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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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