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  • 05/16/11:05

10.27.23:10

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その19

 演奏の終了とともに、拍手が湧き起こった。直美がすこし潤んだような瞳で僕を見ながら、ゆっくりと僕の手の中から離れた。直美の手は少し名残惜しそうに、僕の肩から離れたようにも感じた。
 僕は目だけで合図しながら、ゆっくりと直美と並んで席へと歩き出した。直美は少し後ろをついてきている。予想していた、ふざける様な仕草も、言葉も直美からは出てこなかった。僕の希望的観測を差し引いても、二人はまるで、チークタイムでお互いの気持ちを確かめ合ったような仲に思えた。僕の心臓は激しく脈打ち、弛緩しそうな顔を引き締める為に、全神経を集中していた。
 直美を席に送り届けた後、MickyとRichardと共に、再びステージへ戻った。戻る間中、二人に小突き回されたのは言うまでも無い。それにもかかわらず、もう僕の頬は緩みっぱなしだった。
 ラスト三曲の最初のナンバーは、チャビー・チェッカーの”レッツ・ツイスト・アゲイン”、続いてカール・パーキンスの”ブルー・スウェード・シューズ”と来て、最後はジェリー・リー・ルイスの”火の玉ロック”だ。
 この曲が、僕のお気に入りだという事は、前にも述べた通りだ。ジェリー・リーには、この”火の玉ロック”という曲と同名の伝記的映画が、デニス・クエイド主演で1989年に出ている。ジェリー・リー好きの僕は当然チェックしており、その劇中において、この曲を演奏中のジェリー・リーが、”火の玉ロック”を演奏中に、後に妻となるマイラ演じるウィノナ・ライダーに、ステージの上から”I Love You”と囁くシーンがある。僕はそのジェリー・リーさながらに、踊りながら直美に目をやり、同じように囁いて見せた。もちろん直美に聞こえるわけはないし、照明を落とした店内では、僕の口の動きさえ確認する事はできないだろう。だから、これは僕の浮かれた心を発露する為だけの行為でしかない。だが、確かにその瞬間、僕と直美の視線は絡み合っていたように思える。僕の心が、完全に直美を好きだと確認した一瞬でもあった。


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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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