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  • 05/16/07:04

10.23.23:19

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その18

 今、直美は僕の腕の中にある。彼女の温もりと、柔らかな感触が、僕の手のひらから、心地よい安らぎを運んでくれる。
 驚くべき事に、彼女は拒否する事もなく、ぼくの動きに合わせて、ゆったりと、それでいて少々危なっかしく、ステップを踏んでいるのだ。
 ここまでくると、直美が口にした突然の否定的意見も、彼女なりの僕に対するアプローチだったのではないかといった、自惚れと、自意識過剰に満ちた妄想さえ生まれてくる。今日の僕は、盆と正月と、誕生日とクリスマスと、宝くじの一等前後賞と万馬券が、一度にやってきたような感じだ。
 恍惚と、浮遊感に似た幸福に包まれながら、上手く行き過ぎているこの状況に、一抹の不安を覚えていた。人間、あまりにも順風満帆に過ぎると、何かの間違いではないかと疑ってしまうものだ。僕の不安は、その類のものだった。
 不安を覚えた事で、逆に冷静になった僕は、この状況や、これまでの行動が照れ臭くなり、どうにも直美の顔を注視する事ができず、さりげなく視線をそらした。
 視界に飛び込んできたのは、隣でチークを踊っている老夫婦だった。老夫婦は微笑ましそうに僕を見ていたらしく、そのにこやかな目と僕の視線が交差した。恐らくは、自分たちの青春時代と重ね合わせて、甘酸っぱい思い出を振り返りながら見ていたのだろう。そして、今この時だけは、この老夫婦もその時代に戻って楽しんでいるのかもしれない。僕が軽く会釈をすると、ご婦人がささやかに手を振りながら、何かを囁く様に僕に言った。聞き取る事は出来なかったが、その口元からして、「がんばってね」と言ったのだと、僕は理解した。
 
 

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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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