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  • 05/16/10:22

10.22.23:29

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その17

「チークダンスって、そんなに良いものなのかしら」
 直美得意の、否定的な意見だ。だが、かえってこの言葉が、僕の心に火をつけた。
 もし直美が、かっこいい男の子と踊ってみたいだとか、羨ましいだとか、肯定的な意見を言ったのであれば、これほど僕の心は奮い立たなかっただろう。直美の言葉は、ある種、このダイアナを、オールディーズを、ダンスを、そしてそれらを愛してやまない僕を、否定する言葉のように、僕には聞こえた。
 その言葉に反発する僕が、直美に対する愛情や、事の成否をも超越して、そうする事がさも当然であるかのように、立ち上がらせていた。すこし椅子に足元を取られ、ふらついた僕に、五人の視線が一斉に集まる。
 この男は、これから何をしようというのか。僕に向けられた十個の瞳には、そういう懐疑的な意思がありありと見て取れる。今までの僕なら、この時点で意気消沈して、トイレに言ってくるだとか、タバコを買いに良くだとか、ありふれた言い訳を口にして、その場を立ち去っていただろう。
 だが、僕の手はすでに直美の前に差し出され、僕の双眸は彼女の瞳を的確に捉えていた。そして僕の口は、脳裏に鮮明に映し出された、今口にすべき言葉を飛び出させる瞬間を待ちわびている。
「そこまで言うなら、試してみるか」
 僕の意外な行動にあっけにとられ、彼女は返事をしかねている。僕の視界には入っていないが、恐らく他の四人も、僕の突然の暴挙に、訝しげな表情を浮かべている事だろう。だが、そんな四人を尻目に、僕はもう次の行動に出ていた。直美の手をとり、目はダンスフロアだけを捕らえたまま、ぼくは大股で歩き出していた。


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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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