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  • 05/16/06:29

09.14.23:09

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その9

 僕達六人は、雑踏の中を笑顔を絶やすことなくダイアナへと向かった。中でも今日一番の笑顔は、やはりRichardだ。いつも僕達と居るときに見せる笑顔とは、どこか質が違う。どこがどう違うかを、具体的に説明することは出来ないが、明らかに異なる。それだけは確かだ。彼はそのRichardの名前の由来である、リトル・リチャードの畳み掛けるような曲さながらに、絶えず由美子に話しかけている。まるで他の四人など、この場に居ないかのような感じだ。由美子は、Richardの冗談に、昔どおりのクスクスと上品に抑えた笑みを浮かべている。その笑顔には、どこか翳りがあるようにも見えたが、控えめな笑顔がそう見えるだけのようにも感じた。
 ひんやりとした秋風が、やや火照り気味の僕の頬を冷やかすようになでてゆく。 僕を上気させているのは、隣に居る直美のせいなのは、もはやまぎれも無い事実だ。Mickyもどうやら気を使って、僕と直美が並んで歩けるように、千恵の隣を歩いている。
 こんな感情を抱くのは、ずいぶんと久しぶりな気がする。もう一度直美を好きになったところで、僕に勝算があるわけではない。そういう意味では、好きになってはいけないのかもしれない。だが、今はそんな事はどうでもよかった。今はただ、久しぶりに味わう、このふわふわとした浮遊感にも似た気分に浸って居たいのだ。
 
 ダイアナの扉を開けると、僕達の耳に最初に飛び込んできたのは、プラターズの”君こそわが運命”。切なく胸に響く歌声に、僕は何か運命的なものを感じていた。恐らくRichardもそうだろう。プラターズに出迎えられながら、僕達はウェイターに導かれるまま、席へと向かった。店内は週末らしく、ほとんどの席が埋まっている。今日案内された席は、店の一番奥、トイレへと続く通路の横のボックス席だった。隣には夫婦だろうか、熟年のカップルが落ち着いた感じで座っている。僕はその二人に軽く会釈しながら、席についた。

 

 

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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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