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  • 05/15/18:05

07.22.00:14

小説 ~Lover Shakers~その14

 室井店長の言葉は、すでに僕達がこの店において、特別視されている、つまりは認められたということに他ならない。僕達は、満面の笑みをみせたいところをぐっとこらえて、なるべくクールに、悪く言えばキザっぽく「そうですが」と答えた。
 室井店長はあごに手をやりながら、ふむと頷くと、しばらく僕達の顔を見回した。そして、次の瞬間、彼の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。
「当店では貴方方の入店を拒否することと決まりましたので、どうぞお引取りください」
 淡々とした口調でそれだけ告げると、ドアのほうに手をかざし、僅かに頭を下げて見せた。
 この時の僕達の表情は、クールなロックンローラーなどではなく、痴呆の老人のようだったに違いない。それほど僕達は衝撃を受け、思い描いた希望と現実の余りの落差に、打ちのめされていた。
「どうしてなのか、説明は無いんですか」
 真っ先に正気に帰ったRichardが、鋭い口調で問いかけた。彼がまだ冷静である事は、その言葉遣いからもわかる。僕とMickyも、彼を後押しするように、店長に詰め寄った。
 店長は、先週の晩、店の外ではあるが、ある人が僕達に暴行を受けたこと、またその外の客からも、店内で、フロアの場所取りの件で、脅されたと言う話を数件聞き、その為に入店禁止が決まった事を教えてくれた。
 僕達は、そんな事は出鱈目だと反論したが、一人の客からの苦情だけならまだしも、複数から苦情が来ているため、決定を覆すことは出来ないとはねつけられ、逆に警察沙汰にされなかっただけでも有り難いと思ってくださいと、諭される始末だった。
 濡れ衣を着せられたまま、納得など出来ようはずも無く、僕とRichardは、その苦情を申し立ててきたと言う客と、直接話がしたいと、なおも食い下がったが、それは到底受け入れられるはずも無く、もちろん相手の名前も教えてはもらえなかった。
「もう行こう」
 Mickyが落胆の表情はそのままに、僕達の肩を叩いた。

 僕達はどうにも諦めきれず、店の前から離れられずにいた。Richardはあからさまに怒りをむき出しにして、建物の外壁に拳を何度も叩きつけている。僕は何とか気持ちを落ち着けようと、地面に座り込んで、訳も無くジッポーの蓋を開けたり閉めたりしていた。
「やめないか。営業妨害と言われてもしょうがないぞ。さらに苦情を増やしてどうする」
 RichardにむけてMickyが、少し鋭い口調で言った。
 Richardはもう一度拳を壁に打ち付けた後、
「マジックトーンズの奴らに違いない」
と、凄みのある声で言った。
 その考えは、彼が口にするまでも無く、既に僕の中にあった答えだった。先週の僕達への報復が、まさかこんな形で訪れようとは、誰が想像できただろう。恐らくMickyもそう考えていたに違いない。いや、それ以外に考えようが無かった。複数と言うのも、恐らくはマジックトーンズと交流のある人間の証言に違いない。マジックトーンズは僕らよりこの店の古株だ。それぐらい頼める他の常連客がいたとしても、何の不思議も無い。
 だが、相手が判ったからと言って、僕達にはどうすることも出来ない。苦情を取り下げるよう頼んだところで、彼らが応ずるとは思えない。いや、その前に、知らないの一点張りを通すだろう。まさに八方塞だった。
 僕達の一夜の夢。
 そう呼ぶには、余りにあっけなく、屈辱的な終わり方だった。
「判ったところで、どうなるものでもない。もう行こう」
 Mickyが諭すような口調で、Richardの肩を叩いた。
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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

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