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  • 05/16/02:08

07.23.23:28

小説 ~Lover Shakers~その16

 店のドアを開けると、エルヴィス・プレスリーの「監獄ロック」が僕を迎えてくれた。ある意味囚人のような立場の僕には、ぴったりの曲かもしれない。
 ウェイターの案内で、座りなれないカウンター席に着いて、一通り注文を済ませる。
 カウンター席と言っても、バーテンダーと向かい合うように座る席ではない。そういう席もあるが、ライブハウスというだけあって、ステージ方向に向かった席がある。僕が座ったのはその席だ。一段高い位置にあるカウンターから見る店内と言うのは、なんとも新鮮だった。初めて来る店なのだから当然と言えば当然だが、系列店だけあって、店のつくりは神戸と酷似している。すこし神戸よりは、ステージからの奥行きが小さいだろうか。ダンスフロアは、神戸とほぼ同等か、僅かに小さいぐらいだろう。殆ど遜色は無い。客の入りは、閑散と言うほどではないが、余り多いとは言えない。
 運ばれてきたウイスキーの水割りを口にしたとき、僕はあることに気付いた。駐車場事情等を、先に下調べをしてから、ゆっくりと店に入る予定だったのが、駅から店に一直線に飛び込んできてしまっていたのだ。懐中時計の蓋を開け、目をやると、時刻はまだ七時前。時間に余裕を持って家を出たのだから、早すぎて当然だった。客入りが少ないことも、これで頷ける。たいていの客は、どこか居酒屋などで一杯引っ掛けてから、この店に訪れる事が多い。客が増えだすのは八時から九時の間だ。
 いつもよりゆっくりとした時間にもどかしさを感じつつも、注文したピラフを腹に詰め込み、ジッポー蓋を開けるときの涼しげな音色を楽しみながら、ポールモールに火を点けた。
 ぼんやりと煙の行方を目で追ってみる。頭に浮かぶのは、僕達の今後について。これまでのライブハウスと比べて、やはりここは魅力的だった。もちろんまだバンド演奏や、フロアの様子を見なくては判断は下せないが、神戸と酷似しているだけ有って、僕の心は大阪ダイアナに傾いている。だが、Richardは納得するだろうか。それに交通費だって馬鹿にならない。この地は僕らの新天地と成り得るのだろうか。その不安はどうしても頭から離れなかった。
 
 午後八時。ステージがはじまっても、僕はなんとなくカウンターに座っていた。神戸とは違い、踊っている人は少ない。おじさんやおばさんが数名、リズムを取りながら体を動かしているといった程度だ。
 曲はジョニー・ティロットソンの”ポエトリー・イン・モーション”、スティーブ・ロレンスの”悲しき足音”、ロネッツの”私のベイビー”と、比較的大人しめのポップスナンバーが続いた。客足がまばらな内に、これらの曲を演奏しておき、増えてきた頃にアップテンポのナンバーを持っていくつもりなのだろうか。そんな事を考えながら、僕は様子見を続けていた。ちなみにバンドの演奏は申し分ない。ダイアナのペースメーカーズと比べても、全く遜色ない。
 そんな分析めいたことばかり考えている自分に、少し笑えた。僕達の楽しみは、ダンスだったはずである。それを忘れて、神戸と比べてなんだかんだと言っていては、何の為に来たのか分からない。やはり、神戸を入店禁止になったり、行く先々でがっかりさせられた事で、気が滅入って、どうかしていたのかもしれない。
 ぼくはスローナンバー後に、踊りに飛び出すことを、心に決めたのだった。

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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

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無題

 こちらこそ、はじめまして。
 小説に、丁寧な感想をいただき有難う御座います。
 また暇を見つけて、近い内にお邪魔しようと思います。
 では、またのご来場お待ちしております。

  • 2007年07月26日木
  • NONAME
  • 編集

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