03.10.19:45
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10.02.22:56
小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その14
静かに時間だけが流れてゆく。ダンスフロアでは、数名のカップルが、ある者はふざけあいながら、ある者は固く抱き合いながら、またある者は、熱い視線を絡ませながら、この夜を楽しんでいる。
僕達は、その光景というよりは、それらを包み込んでいるダンスフロアと、彼らのために切なげなメロディーを演奏するバンドをただぼんやりと見ていた。スローナンバーに関して言えば、僕はこうしてぼんやりと演奏に耳を傾けるのも嫌いではない。もちろん、大好きな子とチークを踊る事ができれば、それに勝るものは無いが、恋愛感情と言うもの自体がご無沙汰な僕にとっては、そんな事は皆無に等しい。
拍手が湧き起こり、曲が終わった。僕も手をたたきながら、そっと直美の表情を伺った。彼女は穏やかな笑みをたたえたまま、軽く拍手をしている。その笑みが意味するものは、僕には分からない。ただ、彼女にとっては一風変わっているであろうこの店を、それなりに楽しんでいるようではあった。
バンドのMCがはじまり、それまで薄暗かった店内が、一変して光に包まれた。それとともに、頬をやや赤く染めた直美の横顔が、映える。ぼくは、思わず目をそむけた。このまま見続けてはいけない気がしたのだ。
店内がそれとともにざわつき始めたのをいいことに、Richardは再び由美子に、マシンガントークをはじめている。由美子は嫌な顔一つせずに、Richardの話を聞いている。なかなかいい雰囲気で、何も知らない他人が見れば、十分恋人同士に見えるだろう。だが、これは高校時代にも、十分見られた光景でもあった。
友達以上、恋人未満。
何かのCMで聞いたその言葉が、今の二人にはぴったりな気がした。その中途半端な関係を打破出来るかどうかは、Richardの腕次第である。
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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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僕達は、その光景というよりは、それらを包み込んでいるダンスフロアと、彼らのために切なげなメロディーを演奏するバンドをただぼんやりと見ていた。スローナンバーに関して言えば、僕はこうしてぼんやりと演奏に耳を傾けるのも嫌いではない。もちろん、大好きな子とチークを踊る事ができれば、それに勝るものは無いが、恋愛感情と言うもの自体がご無沙汰な僕にとっては、そんな事は皆無に等しい。
拍手が湧き起こり、曲が終わった。僕も手をたたきながら、そっと直美の表情を伺った。彼女は穏やかな笑みをたたえたまま、軽く拍手をしている。その笑みが意味するものは、僕には分からない。ただ、彼女にとっては一風変わっているであろうこの店を、それなりに楽しんでいるようではあった。
バンドのMCがはじまり、それまで薄暗かった店内が、一変して光に包まれた。それとともに、頬をやや赤く染めた直美の横顔が、映える。ぼくは、思わず目をそむけた。このまま見続けてはいけない気がしたのだ。
店内がそれとともにざわつき始めたのをいいことに、Richardは再び由美子に、マシンガントークをはじめている。由美子は嫌な顔一つせずに、Richardの話を聞いている。なかなかいい雰囲気で、何も知らない他人が見れば、十分恋人同士に見えるだろう。だが、これは高校時代にも、十分見られた光景でもあった。
友達以上、恋人未満。
何かのCMで聞いたその言葉が、今の二人にはぴったりな気がした。その中途半端な関係を打破出来るかどうかは、Richardの腕次第である。
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