03.12.14:26
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10.07.23:16
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 38回目
最初に口を開いたのはRichardだった。彼は大きく煙を吐き出すと、短くなったタバコをもみ消し、僕の目をじっと見詰めた。
「そんなに気にする程の事じゃないぜ。笑いたい奴には笑わせとけよ」
彼らしいと言えば、それまでの言葉だった。気にせずにいられるなら、とっくの昔にダンスフロアに戻っている。それが出来ないから悩んでいるのでは無いか。
僕の怪訝な表情に気付いたのか、Mickyが苦笑を浮かべた。
「コイツの言い方は悪いけど、一理有ると思いますよ。確かに人のすることに難癖をつけるのは良いことじゃない。でも今の時代、こういう店に通い詰めている事だけで、僕達は十分ストレンジャーだと思う。こんな格好をしている僕等はなおさらね。人と違う事をしていれば、時には指差されたり、笑われたりする事もあるかもしれない」
Mickyは言葉を切ると、指の間で残り数ミリになったタバコを一吸いしてから、灰皿に押し付けた。僕の反応を確かめるかのように、目は僕の相貌を捕らえたままだった。 僕はと言うと、彼らが人に笑われる姿がどうしても想像できず、あまり現実味の無い話として捉えていた。
Mickyは水割りを少し口に含んだ後、言葉を繋いだ。
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「そんなに気にする程の事じゃないぜ。笑いたい奴には笑わせとけよ」
彼らしいと言えば、それまでの言葉だった。気にせずにいられるなら、とっくの昔にダンスフロアに戻っている。それが出来ないから悩んでいるのでは無いか。
僕の怪訝な表情に気付いたのか、Mickyが苦笑を浮かべた。
「コイツの言い方は悪いけど、一理有ると思いますよ。確かに人のすることに難癖をつけるのは良いことじゃない。でも今の時代、こういう店に通い詰めている事だけで、僕達は十分ストレンジャーだと思う。こんな格好をしている僕等はなおさらね。人と違う事をしていれば、時には指差されたり、笑われたりする事もあるかもしれない」
Mickyは言葉を切ると、指の間で残り数ミリになったタバコを一吸いしてから、灰皿に押し付けた。僕の反応を確かめるかのように、目は僕の相貌を捕らえたままだった。 僕はと言うと、彼らが人に笑われる姿がどうしても想像できず、あまり現実味の無い話として捉えていた。
Mickyは水割りを少し口に含んだ後、言葉を繋いだ。
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10.06.22:46
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 37回目
それからも、僕はダンスフロアに立ったが、その度に誰かが僕のことを笑い、嘲るのだ。その度に体が震え、心が萎えて、1曲も踊らないうちにトイレへと逃げ込む。
そのうち僕は、踊ることを諦めてしまったのだ。
「その後は見ての通りです。踊れなくなっても、こうしてこの場所にしがみついています」
僕は自嘲的な笑みを浮かべながら、最後にそう締めくくった。僕は喋りすぎて乾いた喉に、ミネラルを流し込みながら、彼らの反応を待っていた。
しばしの静寂が流れる。BGMはプラターズの♪オンリー・ユー♪。この場には場違いな甘いハーモニーが店内を優しく包み込んでいる。
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10.05.22:01
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 36回目
どんなに楽観的に考えようとしても、喉に刺さった小骨のような不安は、僕の頭から離れようとはしない。表面的には、ダンスを馬鹿にするあの若者グループにその楽しさを見せつけようという気概を持ってはいるのだが、実際には、僕の動きは萎縮する一方だった。常にトキメキを感じていたダンスフロアは、いまや針の筵と化していた。
僕の後ろで笑い声が湧き上がる。丁度、あの若者グループの席辺りだ。振り返る勇気はとても無かったが、脳裏に僕を指差して笑いあう男女の姿が鮮明に映し出された。
とたんに、あのトイレのときと同じように膝までもが、笑い出している。僕のステップはさらにぎこちなさを増した。
誰かのウィスパーボイス―
きっと僕を馬鹿にしているに違いない。
一度転がりだしたら、もう止まらなかった。僕のガラス細工のように繊細な自信は、やがて壊れる時が来る事が決められているシャボン玉のように、跡形も無く消えてしまった。
正直、その後僕がどうやってダイアナを離れたのか分からない。気が付いた時には、駅のホームの端で呆然と立ち尽くしていた。
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僕の後ろで笑い声が湧き上がる。丁度、あの若者グループの席辺りだ。振り返る勇気はとても無かったが、脳裏に僕を指差して笑いあう男女の姿が鮮明に映し出された。
とたんに、あのトイレのときと同じように膝までもが、笑い出している。僕のステップはさらにぎこちなさを増した。
誰かのウィスパーボイス―
きっと僕を馬鹿にしているに違いない。
一度転がりだしたら、もう止まらなかった。僕のガラス細工のように繊細な自信は、やがて壊れる時が来る事が決められているシャボン玉のように、跡形も無く消えてしまった。
正直、その後僕がどうやってダイアナを離れたのか分からない。気が付いた時には、駅のホームの端で呆然と立ち尽くしていた。
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10.02.23:25
またまた、お詫び…
10.01.23:13
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 35回目
席に戻った僕は、次のステージが始まるまでの間、ひたすらボトルの中身を減らし続けていた。まるで燃え尽きそうな心に、必死で油を注いでいるかのように。それだけでは飽き足らず、心の中では常に軽蔑されるような理由が無い事を並び立てている。でもどれだけ理由を重ね着しても、僕の心の強度はそれ以上上がりそうになかった。
随分長い間トイレに篭っていたようで、次のステージまでは残り5分。ステージが始まれば、きっとこんな嫌な気分とはおさらば出来る。僕は頑なにそう信じて、その時を待っていた。
そのステージも、やはり出だしから踊れるミディアムテンポのナンバーから始まった。僕は何かを振り切るように、勢い良く飛び降りるようにして、腰高のカウンターチェアを離れた。駆け抜けるようにしてダンスフロアに飛び込み、皆が避けるようにぽっかりと開いた真ん中で踊り始めた。
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随分長い間トイレに篭っていたようで、次のステージまでは残り5分。ステージが始まれば、きっとこんな嫌な気分とはおさらば出来る。僕は頑なにそう信じて、その時を待っていた。
そのステージも、やはり出だしから踊れるミディアムテンポのナンバーから始まった。僕は何かを振り切るように、勢い良く飛び降りるようにして、腰高のカウンターチェアを離れた。駆け抜けるようにしてダンスフロアに飛び込み、皆が避けるようにぽっかりと開いた真ん中で踊り始めた。
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