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  • 05/15/19:33

12.13.22:55

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1 その28

「結婚、結婚って、そんな絶対的なものなのかよ。言っちゃなんだが、結婚てのは、ゴールじゃないんだぜ。まあ、希望は限りなくゼロに近いかもしれないけど、離婚する可能性だって無いわけじゃない。諦められないんだったら、無理に諦める必要なんて、無いと思うぜ」
 Mickyの長饒舌の間に、Richardの顔からは見る見る怒気が消え、唖然とした表情になったかと思うと、瞬く間に、目に生気が蘇って来るのが、面白いほどよく分かった。そして、「そうか。そうなのか」を、何度も繰り返した後には、すっかりいつものRichardにもどっていた。とてもつい数時間前に振られた男には見えない。いつもながら、この立ち直りの早さは、脱帽ものである。
「そうか。離婚か」
 Richardは、そう呟いた後、突然「り・こ・ん!り・こ・ん!」と、叫び始めた。僕と、Mickyもそれに続き、真夜中の大合唱となった。
「待てるなら、待ってみるのもいいんじゃないか。その間に、また別の出会いがあるかもしれないし。もっと、いい子と出会えば、その時に、由美子の事を忘れればいい」
 馬鹿騒ぎが一段落した後、またもやMickyが良い事を言った。Mickyが離婚の可能性を言ったのは、ある意味気休めかもしれない。だけど、絶対に無いとは言い切れないし、振られて僕の様に恋愛のスイッチが切れてしまうよりは、よほどポジティブな発想だと思う。これから幸せになろうとしている由美子には、迷惑極まりない話かもしれないが……。

「遠征しないか?」
 いつもより少し早い眠りにつこうと、寝転がってしばらくした頃、Richardが呟くような声で言った。遠征とは、全国チェーン店であるダイアナの、他の地域の店舗に行こうと言う話である。以前から、僕達の間で、度々話題に上ってはいたが、いまだに実行に移した事はなかった。
「失恋旅行って訳か」
 Mickyが、からかう様にそう言い、乗り気な僕は、「いいな。何処にする」と、 Richardが反論する前に、そう聞いた。
「何処でも良いや。詳しい事は任せる」
 これもRichardの十八番だ。言うだけ言って、面倒くさい事は、僕とMickyに丸投げなのだ。
「札幌でも、那覇でもいいんだな」
 Mickyが意地悪く笑った。
「いや。程々の距離でお願いします」
 この答えからして、それでも矢張り、自分で決める気は無いらしい。


                     (了)

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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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