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  • 05/16/09:44

08.24.00:01

小説 ~Lover Shakers~ autumn season Vol.1

 ステージが終わり、僕とMickyが席に戻った後も、しばらくRichardは席に戻ってこなかった。周囲を見回してみたが、若い女性客の周辺にもその姿は無い。そんなに飲みすぎている様子もなかったし、体調が悪いそぶりも見せていなかったので、そんなに気にも留めず、僕とMickyは談笑していた。
 だが、さすがに三十分も姿を現さないと、さすがに気になる。僕がMickyにトイレを見てくると告げると、Mickyはレジに行って見かけなかったか訊いて来ると言って、二人同時に席を立った。
 今日の僕達の席は、カウンター席の真下で、一番通路側の席だ。Mickyと別れて、トイレへとすすむ中で、僕の頭の中では、ある不安が浮上していた。
 Richardは僕達の中で、一番激し易い性質である。以前に、この店の古株であるローラーチーム、マジックトーンズと一悶着あった事もあって、なにかトラブルに巻き込まれたのではないかと感じたのだ。マジックトーンズとはその件以来、何度か店で顔を合わせてはいるが、特に何事もなく、関係は良くも悪くも無い。だからと言って、安心は出来ないし、また全く関係の無いただの酔っ払いに絡まれているのかもしれない。高まる不安に、僕の歩調は自然と早まって行った。
 トイレのドアの前まで来たが、言い争う声も、物騒な物音も、特に聞こえない。僕はゆっくりとドアを開けた。
 すると、ちょうどトイレを出ようとしていたカマキリを思わせる容姿の、マジックトーンズのメンバーと出くわした。向こうも、僕と出くわしたというよりは、ドアを開けようとした瞬間に、ドアが開いた事にギョっとしたようで、少し体をのけぞらせて目を白黒させていたが、目の前に居るのが僕と分かると、仏頂面で目だけをぎょろりと動かし、見下すような目で僕を見て、そのまま横をすり抜けていった。
 僕はカマキリを呼びとめ、僕の連れを見なかったかと、訊いてみた。カマキリは首だけ回して細い目で僕を見ると、小さく首を振ると足早に去っていった。その不敵な表情からは、知っているのか、本当に知らないのかは定かではなかったが、僕はもう一度と入れのドアを開き、中を確かめた。小便器二つに手洗いが一つと、奥に個室のトイレがあるだけの小さなトイレである。すぐにRichardの姿が無いことは確認できた。個室もドアが開いているので、誰も居ない。
 何処に行ったんだろうと、僕は独り言のように呟くと、トイレを後にした。
 通路に出ると、僕はもう一度店内を見回してみた。だが、僕達の席はもちろん、他のテーブルにもRichardの姿は見出せない。ただ、僕達の席にはすでにMickyが戻っており、僕はとりあえず席へと向かった。

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*この小説はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
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