03.10.16:59
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12.25.23:43
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.2 72回目
♪カラーに口紅♪は僕の親友専用の着信音、つまりはダイアナに共に通っていた3人だけのものなのだが、最近では滅多に鳴らない為に、殆ど忘れかけていたのだ。
僕の心は自分でも不思議なくらい逸り、殆ど転がり込むようにして部屋に戻り、携帯のサブウィンドウを覗き込むと、そこには”谷川”の文字。谷川は僕達の中で、一番最初にダイアナから遠ざかった、就職で関東へと旅立った男だ。最後に会ったのは2年程前。彼の結婚式以来で、僕にとって最も意外な相手だった。
電話口の向こうの谷川の声は、上気している様が実際に見えそうな程、興奮して上ずっており、かつ早口で、ありきたりな『元気にしていたか』といった、お決まり文句を処理した後、回りくどい事が嫌いな彼らしい唐突さでもって、早速本題を口にした。
「俺来週から大阪勤務になったんだ。で、次の週末、久しぶりにダイアナに行こうと思って。どうせお前まだ行ってるんだろ?一緒に行こうぜ」
『どうせ』と『まだ』と言う言葉が妙に引っかかったが、彼の剣幕に負けて、あるいは心の底で待ち望んでいた瞬間が訪れたとでもいうように、僕は一も二も無く了承していた。
「じゃあ、また連絡するよ」
言いたい事を言い終えた谷川は、これまた唐突に電話を切り、おかげで僕はしばらくの間受話器から流れるプープーという音を呆然と聞いていたのだった。
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この小説はフィクションです。
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僕の心は自分でも不思議なくらい逸り、殆ど転がり込むようにして部屋に戻り、携帯のサブウィンドウを覗き込むと、そこには”谷川”の文字。谷川は僕達の中で、一番最初にダイアナから遠ざかった、就職で関東へと旅立った男だ。最後に会ったのは2年程前。彼の結婚式以来で、僕にとって最も意外な相手だった。
電話口の向こうの谷川の声は、上気している様が実際に見えそうな程、興奮して上ずっており、かつ早口で、ありきたりな『元気にしていたか』といった、お決まり文句を処理した後、回りくどい事が嫌いな彼らしい唐突さでもって、早速本題を口にした。
「俺来週から大阪勤務になったんだ。で、次の週末、久しぶりにダイアナに行こうと思って。どうせお前まだ行ってるんだろ?一緒に行こうぜ」
『どうせ』と『まだ』と言う言葉が妙に引っかかったが、彼の剣幕に負けて、あるいは心の底で待ち望んでいた瞬間が訪れたとでもいうように、僕は一も二も無く了承していた。
「じゃあ、また連絡するよ」
言いたい事を言い終えた谷川は、これまた唐突に電話を切り、おかげで僕はしばらくの間受話器から流れるプープーという音を呆然と聞いていたのだった。
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