03.10.20:40
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08.07.23:00
小説~Lover Shakers~Outside Storys Vol.1その22
いつの間にかスローナンバーが終わっていたのか、それとは明らかに異なる、ハイテンポでリズミカルなピアノが奏でるメロディが、トイレの中の僕の鼓膜をくすぐる。
「ひさ兄がリクエストした曲だ。”At the hop!”。邦題で”踊りに行こう”って曲なんだ」
べーやんの目が輝いている。確かにこの曲のイントロには、それだけの力がある。いや、これまで耳にしてきた音楽の多くには、そういう力が溢れていたのだ。それを受け入れられなかったのは、僕が頑なに閉ざしてきた扉のせいに他ならない。
その扉が大きく開かれた今、僕の五体は檻から解き放たれた野生動物のように、人の制御を離れたアンドロイドのように、自らの感じるままに、衝動に突き動かされるままに躍動する瞬間を待ち望んでいる。
僕とべーやんはトイレの扉を勢い良く開けると、先を争うかのようにステージへと急いだ。
そこにはすでにひさ兄とヒロ、それにLover Shakersの3人が踊っている。
僕とべーやんもその中に加わった。
べーやんの笑顔。
ひさ兄の笑顔。
喫茶店の男の笑顔。
ヒロの笑顔。
ツイストなんてさっぱり分からないけれど、僕は思いのままに体をひねった。ひさ兄やLover Shakersの面々はツイスト以外の動きも見せていたが、全部無視した。それは傍から見れば、”壊れた操り人形”以外の何者でもないかもしれない。でも今はそんなことはどうでもよかった。誰かから金を頂戴しているわけでは無いし、だれに迷惑をかけるわけでもない。
音楽―
その文字通り、音を楽しめればそれで良いのだ。
今はただそれでいい。
今はただそれだけで満足だった。
いつまでもこの音楽の中で揺れていたい。
大切な仲間と、この貴重な時間を共有していたい。
その思いを胸に、ぼくは今この時、この場所を全身全霊をあげて楽しんでいた。
終電に揺られながら、僕達4人は家路をたどった。
ひさ兄は酔いと疲労からか、隣で舟を漕いでいる。
ヒロはコンビニで手に入れたスナック菓子を頬張りながら、メタボに磨きをかけている。
僕とべーやんはそんなヒロに突っ込みを入れるが、もちろんヒロはお構いなしだ。
車内では、酔いつぶれた中年や、人目を気にしないネジの外れたカップルなど、つまらない現実に溢れている。
でも、その景色はいつもとは違ったものに、僕の目に映っていた。
確かに現実には汚れたもの、つまらないものが溢れている。でも、それに埋もれてしまうかどうかは、自分の心の持ちよう次第なのだ。
大袈裟かもしれないが、自分の人生を楽しめるか否かは、誰のせいでも、社会のせいでも無い。自分が楽しんでいるか否かというだけの事なのだ。何事もやってみなければ事の本質はつかめない。仕事も遊びもだ。僕はその事に、ようやく気付いたのかもしれない。
少し輝きを取り戻した世界の中で、少しだけ前を向く事ができた僕は、この素晴らしい仲間達と共に進む、新しい夜明けを模索していた。
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<了>
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どうも
「Shin」ですよ
とうとう終わっちゃったのね
コメント
頭の中で 整理して
あらためて おじゃましますね
よければ 遊びに来て
http://ameblo.jp/team-s-k-u-y/
「Shin」 でした
Jerryです。
>とうとう終わっちゃったのね
はい。
先にもまだ書きたい話は有るのですが、それはまた次回と言う事で…。
最後の方の文章は、大分悩みながら、どうも腑に落ちない、納得がいかないという感じはありましたが、他によい文章も浮かばず、ああいう形となりました。
如何だったでしょうか?
>コメント 頭の中で 整理して あらためて おじゃましますね
はい。
いつでもどうぞ。
お待ちしております。
>よければ 遊びに来て
はい。
早速お邪魔しました。
一応ゲストブック(?)にコメントを書いたのですが、ちゃんとUP出来ているか心配です。
では、また。
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